2014年12月08日

【もしベビ】コソダテとキャリアの両立を阻む問題構造

SNSで大変話題になっているサイボウズのCM。

サイボウズ ワークスタイルムービー「大丈夫」
http://cybozu.co.jp/company/workstyle/mama/

いろんな感想があると思いますが、ワーキングマザー当事者であり経営学研究者としての私の感想は次の4つでした。

1)この女性は、プロジェクト・マネジメントをはじめとするマネジメント思考をもう少し身に着けることで、両立が楽になる。
2)この女性が働く会社(部署)の中間管理職は、チーミングをはじめとするマネジメントスキルをもう少し身に着けることで、部下の離職を防げる。
3)具体的な解決策の提案がない当事者の訴えはただの権利主張にしか見えないが、これはサイボウズという女性色が薄い組織が、解決策としてサイボウズのソフトウェアを提案していることで(CM単体ではわからないのが難点だけど)、権利主張ではなく問題解決に見える。
4)この働く母親のネガティブイメージを見せられた次世代の女性は、「コソダテかキャリアか」という選択をしなくてはならないと思うだろう。

このCM、いい問題提起だとは思うけど、最後のコピーだけがいけてない。
私は「よりそう」よりも、「この状況を変えよう」であって欲しかったと思いますねえ。だってこれ、女性だけの問題じゃないもの。

プレジデントオンラインにも取り上げられた育休中に友達と始めた勉強会授乳しながら学べる「育休MBA」)の教材を作るために、自由研究としてコソダテとキャリアの両立に関する問題を調べていたのですが、そこでわかったこととして、両立を妨げる要因(コソダテ女性が離職に至る要因)は、@女性個人の課題とA企業側の経営課題とに大別されます。なお本来@は女性に限らず子育て中の社員すべてが該当することでもありますが、ここではその多くを占めるのが女性であることから、女性の課題として話します。

@女性個人の課題としては、仕事タスクや家事育児タスクを抱え込む傾向があり、自分が頑張ることで何とかしようという思考が強いこと、“組織で”成果を出すという思考とスキルが欠如していること、が大きいです。コドモが生まれる前は仕事タスクが多くても長時間労働でカバーできるのですが、これがコドモが生まれてコソダテラッシュアワー前に退社するライフスタイルになると一気に回らなくなりますし、普段一人で仕事することに慣れているとタスクを形式知化しないので、緊急時に別の人が引き継ぎにくい、負荷が集中したときに周りがサポートしにくい仕事の仕方をしていたりします。つまり一人で頑張ろうとするがゆえに破綻する、という構造があるように思います。家事育児タスクも、任せられないという事情があるのかもしれませんが、自分が動かなくても回るようにするにはどうするかを考えておく、つまり「他者を使ってものごとを成し遂げること」と定義されるマネジャー視点(中原,2014)で脳みそを使えるか否かは大きいのではないかと思います。

A企業側の経営課題としては、恒常的な残業があることが大きいです。残業しないワークスタイルであれば、コソダテとキャリアの両立はそれほど難しいものではないと考えています。残業が発生する理由は、戦略上避けられない結果である場合(普通の人の3倍働く人が集まっているコンサルティングファームとか)を除き、長時間労働をよしとする組織文化がはびこっていることと、プレイングマネージャーが多くマネジメント業務がおろそかになり組織の生産性が低くなっていること、だと思っています。組織文化は成員の行動を規定しますから、時間をかけることを評価する文化である限り残業はなくならないです。また、組織の文化は意思決定サイドがつくるので、現場の社員やコソダテ当事者だけではなく、意思決定者(経営者や管理職)が考え方を変えないと、この残業文化は変わらないと思います。中間管理職が機能しない組織がカオスに陥ることは、説明するまでもないですね。

で、この@とAが合わさり、企業側は任せられない、女性側は引き受けられないという状況になり、ただでさえ低い組織の生産性はさらに低下し、そのうえで短い時間の中で業務をこなすコソダテ女性はコミュニケーションに割く時間を削りがちなためにコミュニケーション不足に陥って状況は悪化。最終的にはコソダテ女性を頭数に数えない業務フローが出来上がり、コソダテ中の男性を含む男性が残業させられ、そして夫が長時間労働をせざるをえないために家事育児タスクが妻だけにのしかかり、さらに仕事をしづらくなる・・・という構造になっているなーと感じています。

こうして、サイボウズCMがあぶりだしている状況は出来上がっています。
社会問題は構造問題であるということをしみじみと実感します。

では、どこでこの不幸なループを断てるのか?

@については、女性はもっと組織やチームで成果を出すための働き方を学ぶ機会があってもいいかなと思います。つまりマネージャー視点を持つためのトレーニングが有効なのではないかと。Aについては、管理職に労務管理だけでなく組織を動かすための知識やノウハウを学ぶ機会があってもいいかなと思います。つまりこちらも、マネージャー視点を持つためのトレーニングが有効なのではないかと。あと、労働時間で評価しない人事制度や組織文化が必要ですね。

もちろんこれだけでは根本解決にはならないけれど、とりあえず今の自分は、そういうトレーニング機会を作るということは出来る。ならば作ろう、と。私は、自分たち世代のうしろ姿を見ている次世代の女性たちが、コソダテとキャリアのどちらかを諦めずに済むような社会を作っていきたい。選ばないのは個人の自由だけど、諦めざるを得ないという状況はなんとかしたい。たとえ地味で小さな一歩でも、この社会問題の解決策の1つになればいいな、せめて対症療法になればいいなという想いで、私は育休プチMBA勉強会をやっているんだなという結論に至りました。

勉強会の参考書。
駆け出しマネジャーの成長論 - 7つの挑戦課題を「科学」する (中公新書ラクレ) -
駆け出しマネジャーの成長論 - 7つの挑戦課題を「科学」する (中公新書ラクレ) -





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2014年11月30日

【もしベビ】プロジェクト・マネジメントの知識で考える家事の時短テク

仕事とコソダテの両立ライフをはじめて3か月が過ぎました。ゼロ歳児を育てながらフルタイムで働いているというと、両立は大変でしょうとよく言われます。確かに決して楽ではないのですが、思っていたほど大変でもない、というのが今のところの印象です。コソダテ自体は初めての経験なのでそれは大変としても、家事の効率化にわりと成功していて、産前よりも家事に割く時間は減っているのが大きい気がします。これから両立ライフに突入する誰かのお役に立つかもしれないので、少し形式知化しておこうと思います。

まず最初にすべきことは、家事にまつわるもろもろのタスクの可視化です。それには作業分解図(Work-Breakdown-Structure/WBS)を利用します。たとえばこんな感じ。

家事WBS.jpg

次にそれぞれの分割した最少単位の作業(Work Package/WP)ごとに対策を考えていきますが、ポイントはこだわるところと徹底的に合理化を進めるところとを明確に分けることだと思っています。合理化しないと自分が大変になりますが、あまり合理化しすぎても生活が味気なくなりますので、どこに時間と手間をかけてどこにかけないというのを明文化するのは大事ですね。手間をかけないところを決めておくことで、その部分がゴタゴタになっていてもまあいいかと思えるという精神的な効果もあります。

以下、我が家の例で具体的に説明します。

まず「2.1食事」については、私は料理は好きなうえ中食が続くと体調が悪くなるので、今のところお弁当含め3食すべて作っています。ただ私の拘りは「2.1.3料理」だけで、それ以外は可能な限り合理化を進めました。たとえば「2.1.1献立作り」は週に1回まとめて実施します。スーパーではなく自宅で、かつ複数食をまとめて考えるので、料理本の材料別インデックスや検索機能に優れたCookpadをフル活用しています。最近、料理本は後ろからしか読まないですね。考えると言っても、曜日ごとにメインの素材(豚肉・鶏肉・牛肉・魚・ひき肉)を決めてしまっているので、その素材で作れるものを料理本からピックアップするだけです。ある程度の制約があったほうが意思決定は楽なので、この素材を決めてしまうのはかなりおすすめ。冷蔵庫に献立表を貼っているのですが、ついでに自分の仕事の予定も書きこんでおり、この日は遅くなりそうだからお寿司を買って帰ろう、この日は時間がありそうだからちょっと手の込んだハンバーグを作ろう、というふうに考えています。なお帰宅してから作る時間はないので、朝に朝食づくりと並行してお弁当と夕食の準備をしていますが40分くらいで2名の3食分が完成しますね。

「2.1.2買い物」はOisixの定期ボックスを使うようになりました。仕事をしていると週末にしか買い物に行けないのですが、3kgのベビを抱っこして1週間分の食材をまとめ買いするという行為を2,3回やってみて、その大変さと付加価値のなさにうんざりしまして、ネットスーパーに切り替えることにしました。いくつかあるネットスーパーでOisixを選んだのは、お魚の品ぞろえが豊富なこと(うちはお魚好きなので)、定期ボックスという自分でカスタマイズした定番セットを定期的に届けてもらえること(まとめ買いだと実はあまり内容に変化がないです)、がアンド条件で揃ったのが理由です。とはいえ、使い始めたころは大根1本280円とか、すごく高いスーパーだなあと思っていました。あと、ぶっちゃけ新鮮ではあるけど特別おいしいとも思わない。ですが、使っているうちにこれはスーパーではなく働く人向けのサービス業なんだということがわかりまして。スマホでの買い物のしやすさとか(電車移動中に注文完了できる)、注文締切のリマインダーとか(配達日と注文日が中2日空いているので絶対忘れる)、ほどよく変化のある商品提案とか(こちらが指定した定番品とOisixの旬のおすすめがデフォルトで、その上で毎回変更して注文確定する)、時間がない人がやりがちなポカミス対策とか(デフォルトが変更されていないとアラートが飛ぶ)、一回このサービスレベルに慣れると完全にロックインされます。肝心の価格ですが、うちは荷造手数料がかからない4,000円以上の注文を週1で届けてもらっていますが、それ以外に買い物に行けないのでちょこちょこ買いをしなくなったこと、ベビがいるため外食費が激減していることを併せて考えると、トータルの食費は産前より下がっています。
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定番買い物リスト、献立計画、スマホのOisixサイト。

そして「2.1.4洗い物」は食洗機フル活用です。うっかり勿体ないマインドが出て手洗いをして本末転倒になってしまう大きい食洗機より、毎回の食事分を洗うのに罪悪感のない小さ目サイズがよいと私は思います。

「2.2洗濯」は、「2.2.1洗う」「2.2.2干す」までは、当然自動洗濯乾燥機ですよね。ここは迷いがないところです。が、「2.2.3たたむ」に苦労している人は多いかと。“自動”洗濯乾燥機っていうんならたたむところまでやってくれよって1回は思うよね。でも我が家は検討の結果、このタスクに対しては「たたまない」というソリューションを導入することにしました。要は、たたまなくていいようなオペレーションに変更するということで、しわにならないものはメンバーごとに用意した「洗い終わった洗濯物入れ」に突っ込んでおく、しわになるものはハンガー干しで乾してそのままクローゼットに突っ込む、という感じです。で、洋服を使うときはこのバケツから直接取り出して使います。
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白の大きいサイズが「洗う前の洗濯物入れ」、ピンクがムスメ、ブルーが私、緑がオットの「洗い終わった洗濯物入れ」です。

「2.3掃除・片付け」ですが、私は掃除がめっちゃ嫌いなので、「掃除へのモチベーションが低くても回せるオペレーション」を目指しました。まずものが多いと掃除する気が失せやすいので、物を買わない・置かないを心掛けます。物が少ないとルンバが使いやすいこともあり、「2.3.2週1」のルンバを基本オペレーションにできますので、私は出勤前にスイッチ押すだけです。そのうえで「2.3.1日1」で気が付いたところをさっと掃除するようにしてます。しかし基本的にモチベは低いので、「さっと掃除」のハードルを下げるところに投資します。たとえばマキタのコードレスクリーナー。コードレスはいくつか使いましたが使いやすさと吸引力はマキタがダントツで、ツールの使い勝手がいいとモチベーション低くてもさっと掃除ができます。使い捨てのモップ・布巾系を用意して、さっと拭いてさっと捨てるという方法も。重たい掃除機を出してかけるとか、雑巾を洗うとか、モチベーション高くないと出来ませんから。で、ここまで頑張っておけば、他に特に掃除をしなくてもまあまあきれいな状態が保てますね。あとは、もう少し仕事が立て込んできたら「2.3.3月1」でプロのお掃除サービスを頼む予定。月に1回でも徹底的に掃除すれば、次の1か月は上記の週1日1で十分きれいに過ごせると思います。要は汚れを一定期間以上積もらせないということが大事なのだと思うのです。
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マキタさんとルンバさん

仕事とコソダテの両立生活を始めるにあたり、徹底的に合理化を進めた結果、DINKS時代より時間がかなりセーブできているなあというのが今の実感です。もっと早くやっておけばよかったかな。


posted by Kokubo at 23:08| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | もしベビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月10日

【もしベビ】育休プチMBAの効用

前のエントリ―で書いた育休を活用したMBA体験勉強会(育休プチMBA)を実施してみて気づいたことを少しまとめておきます。

ワーママ当事者として実感したことの1番は、コドモへの愛情と仕事への愛情は、全然カニバらない!! 一回仕事の楽しさを知っている身としては、コソダテが楽しいからといって仕事への愛情は薄れない。ただ投下時間は強烈にカニバリゼーションを起こすので、残業をはじめとする労働時間に対する制約は強く受けてしまいます。でも「残業ができない」ということは、「短い時間しか労働したくない」という意味ではなく、「18時〜21時というコソダテラッシュアワーに家に居たい」という意味なんだというのは、自分が当事者になって初めてわかったことでした。なのでこれ以外の時間、つまりコドモが寝たあとの時間や早朝を仕事に充てることでカバーできます。実際、私は夕方は18時に帰ってコドモと一緒に21時には就寝しますが、朝は4時半に起きて7時まで仕事をしています。出産前は22時ごろまでふつうに仕事をしていたのでその夜の4時間分を朝の2時間半にシフトして、時間当たりの生産性をあげることでトータルのアウトプットをなんとか保っています。ですが、こういう柔軟な働き方を認めてもらえない場合は、単純に労働時間の短縮になるので産前と同じだけのアウトプットを保つことは大変だろうなと思います。こういう労働時間の調整をはじめコソダテと仕事を両立するためには乗り越えなくてはいけない課題が多いため、仕事へのモチベーションは変わらなくとも、この課題の山にくじけてしまって退職を選ばざるを得ない女性が多いというのは「育休世代のジレンマ(中野,2014) 」でも証明されていました。曰く、両立の阻害要因としてもっとも大きいのは「職場環境要因」であり、その現実に直面した女性が自分の仕事への意識を下方修正することで適応している、とのこと。しかし、これは逆に言えば企業側が環境を整備することでこういった女性のモチベーション低下を回避することができるわけです。同時に、女性当事者も両立ノウハウを共有できて精神的に支えあえるネットワークがあれば、課題克服スキルがあがるので結果としての就業継続性に直結すると思います。つまり、「うちの会社の女性は意識が低い」は、経営者次第で回避可能な問題だということです。

そして勉強会の参加者の皆さんを見ていることで、この私の仮説は確信に変わりました。両手はコドモの世話をしつつも脳みそと耳と口でディスカッションに参加するというのは、学習やスキルアップへのモチベーションが高い証拠です。(ちなみに男性だとこういう並行作業って難しいんじゃないかなと思うのですが、マルチプロセッサー脳の女性はこれでも十分に学習効果が上がるということがわかりました)。彼女たちは制約を抱えた身になるという自覚があるからこそ、自分の人材としての価値をあげて経営に資する存在にならなくてはいけないという危機感もありますし、何より経営者目線での意思決定トレーニングを楽しんでいます。そういう姿を見て、経営者にとってこんなに貴重な経営資源はないんじゃないの?と思うんですよ。

正直なところ、私も自分が出産するまではコソダテ女性を経営資源として見ていませんでした。経営学を教えているので、周りは男性が多いし、企業の管理職研修・リーダーシップ研修の受講生も9割は男性です。だから女性は経営や管理職に興味がないのだろうな、仕事に対する意識が低いんだろうなとずっと思っていまして、なので今回ママ友に「マネジメントの勉強がしたいから育休女性を集めた勉強会をやらないか」と声をかけられたときも、「いつも男性相手にやっているコンテンツを女性相手に提供したらどんなディスカッションになるんだろう?」という単純な好奇心が先に立ち、彼女たちがどれほど経営に資する存在なのかという点はあまり考えていませんでした。実際、勉強会の最初の方はプレイヤー目線が強すぎて、客観的に状況を眺めて経営者視点で判断するということは出来ていませんでした。しかし回を重ねるごとにその成長は著しく、時短者の扱いを経営合理性から判断するということもできるようになってきました。それを見て、これは宝の山を掘り当てたなあというのが今の気持ちです。

コソダテ女性が持つ制約の条件を企業側が正確に理解できていないために環境整備ができていない、女性側も責任感が強いがゆえに両立できるかどうか確信が持てない状況で仕事を引き受けることには積極的になれないという課題はあります。ですが、そのミスコミュニケーションさえ正せば、お互いWIN-WINの状況に持っていくことは難しくないと感じていますし、育休期間を使って経営者思考のトレーニングをすることがその第一歩になると感じています。

女性は、育休期間を学習機会に。
企業は、制約を克服するための環境整備を。


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2014年11月09日

【もしベビ】育休を活用したMBA体験勉強会(育休プチMBA)

(2015/5/12追記:最新の案内はこちらです→ 育休プチMBA勉強会について

産後4ヶ月目から、育児休業を取得して復職する女性(以下育休復職者)を対象に、スムースな復職および休業中のスキルアップを支援するための勉強会を開催しています。@経営者目線の獲得A仕事と育児の両立生活を支え合えるネットワーク作りを目的に、管理職に必要な思考やスキル、および(女性)育休復職者に特有の課題に対する解決能力をディスカッションしながら身に着けていくことを目指しています。これまでに全10回開催、のべ97人が参加(2014/11/9時点)。

この勉強会の特徴は、1歳未満の乳児を同伴して、ビジネススクールの単科クラスに類似したコンテンツを受講できることにあります。育児休業中ですので、24時間体制の育児中であることに変わりはありませんが、子どもが4ヶ月くらいになれば余裕が出てきますし、目は子どもから離さないにしろ、脳みそと耳と口は勉強のために使うことができます。そのため勉強会ではマンションの一室を会場にし、ディスカッションしながらの抱っこ・授乳・オムツかえOKというスタイルにしています。その一方で、内容は慶応ビジネススクールやオリジナルのケース教材を用いており、MBAと同様に経営者視点で考え、ディスカッションをしています。ビジネススクールの本質は経営知識の習得ではなく、経営者目線での意思決定トレーニングであると考えていますが、この勉強会では残業ができないという制約を背負った子育て中の女性が当事者目線だけでなく経営者目線で、どのようにチームに貢献できるか、組織の成果に貢献できるかを皆で考えています。子育て女性が復職した際に直面する課題の多くは、女性個人の問題というより経営課題であることが多く、ゆえに経営者による組織改革で解決できる部分が多くあります。そこで、女性が自らの環境改善というより、組織全体の最適化のために改善案を提案・実行できるようになることを目指しています。

このプログラムは、NPO法人マドレボニータが提供する産後女性向けエクササイズ教室で出会った友人の「経営を勉強したい」というニーズに応える形で国保が開発しています。なお第6回まではプロ講師(国保)でしたが、第7回からは参加者がファシリテーターを担っており、自律的に学習コミュニティが運営されているというところにも特徴があります。

【育休期間を利用して勉強会を行うメリット】
勉強会に参加することで、育児休暇を能力開発のための学習機会にできます。具体的には以下の通り。
@経営者目線の獲得によって得られる効果
・よりスキルアップした状態で育休復帰者を迎えることができるため、組織にとっても復職当事者にとっても不幸な復職後の再適応不全を最小限にとどめることができる。
・育休復職者が経営者目線で自らを俯瞰するようになることで、時短などの制約がありつつもどのように経営に資する存在となりえるかの提案と行動ができる。(例:業務を短時間で集中して行う仕組みをつくり、部署内全体の業務改善に役立てることで時短勤務者のみならずみんなが働きやすい環境づくりを実現する。買い物する暇がない子育て世代等をターゲットとしたインターネット販売事業の強化等、自身の環境変化を生かした業務や事業を提案する。子育て女性を含むダイバーシティの高い人材のマネジメントを当事者として実施し、企業競争力につなげる。子どもの病気のような突発事項に備え業務を抱え込まない体制づくりを実施することで、後進の育成にもつなげることができる等)
・育休復職者は帰る場所があるありがたみを実感しているので、企業に関する忠誠心と管理職に必要なマネジメント知識を併せ持った女性管理職候補を確保できる。
・育休復職者が経営者目線を獲得することで、個人としてはもちろんのこと、チーム全体のパフォーマンス向上を意識して行動できる。
・家事・育児のマルチタスクをこなす能力、突発事項への対応能力など、仕事と育児を両立する過程の中で培われる問題解決能力を、業務でも発揮できるようになる
・これまでのキャリアをゼロリセットせず、復職後も経験を活かした人材として活躍できる

A仕事と育児の両立生活を支え合えるネットワーク作りによって得られる効果
・仕事と育児を両立するためのTIPSを共有し、精神的にフォローしあうネットワークがあることで、女性が仕事を継続しやすくなり、職場での人材活用や離職の防止につながる。
・次世代の女性に社内外でのロールモデルを示し、さらなる人材の発掘や継続就業を実現できる
・仕事と育児を両立するうえで降りかかる課題を事前に疑似体験することで、ワクチン効果による課題克服能力が高まる

【学習内容】
1)管理職思考に移行するための挑戦課題
中原淳「駆け出しマネジャーの成長論」(中公新書ラクレ)の7つの挑戦課題を身に着けることで、プレイヤー思考から管理職思考にシフトすることを目指します。「他者を使ってものごとを成し遂げること」と定義されるマネジャーとして振る舞う知識とスキルを身に着けることで、育児とキャリアの両立がしやすくなるだけでなく、社内外での人材としての付加価値向上にも繋がります。また両立課題について客観的に眺め、経営者目線でのコミュニケーションが出来るようになることも目指します。
具体的な挑戦課題: @部下育成 A目標咀嚼 B政治交渉 C多様な人材活用 D意思決定 Eマインド維持 Fプレマネバランス
2)女性リーダーに特有の挑戦課題
リーダーシップという組織の目的を達成するためにメンバーに与える影響力を身に着けることで、人材としての付加価値を向上することを目指します。働くことへの覚悟を持つとともに、女性リーダーに特有の課題に対しても働くことを前提に解決策を考える問題解決思考を身につけます。さらには社内外で不足しがちな女性ロールモデルを後輩女性に提示したり、ワーキングマザーならではの生産性アップのコツを共有したりしています。
具体的な挑戦課題:G組織全体の構造を踏まえた意思決定と行動 Hリーダーシップの構造づくり軸
3)女性が直面する「壁」を疑似体験する
子育てをしながら仕事をしていることで陥りやすい苦境を事前に疑似体験しておくことで、いざというときに冷静に対処できるよう気持ちと環境を備えることができます。当事者はどうしても視野狭窄に陥るため、あらかじめ客観的に見つめる視点を獲得することでワクチン効果となり、苦境の最中でも自分を俯瞰して経営者目線での対策を思いつけるようになることを目指しています。

【これまでに扱ったテーマとケース】
第1回 学習ニーズヒアリング
第2回 マネジメント思考の基礎/「北村店長のスタッフ管理」(KBS公式ケース)
第3回 マネジメント思考の基礎と人材育成/「あるコンビニエンスストアの現金違算」(KBS公式ケース)、「『アルバイトが自主性を持って動かないんです』と訴える店長」
第4回 当事者視点から見る時短勤務者と管理職視点から見る時短勤務者/「支店長のお小言」「復職後半年で退職を考える育休復帰者」
第5回 プロジェクト・マネジメントと問題解決思考/「岸本貴子の職場復帰前面談」
第6回 女性活用戦略の経営合理性/「鹿児島銀行ー組織改革と女性活用ー」(KBS公式ケース)
第7回 ダイバーシティ・マネジメント/「品川情報システム株式会社-ダイバーシティと現実-」(KBS公式ケース)
第8回 制約のある人材のマネジメント/「北村店長のスタッフ管理」(KBS公式ケース)
第9回 女性のリーダーシップ特性/「キリンフリーの開発」
第10回 業務フローの改善/「岡村課長と定時後のクレーム」
番外編 ケースメソッドで考えるキャリアと結婚(女子大生向け)/「結婚するかどうか迷っている新聞記者」「再就職支援コンサルタントの悩み」
番外編 ケース開発プロジェクト:在宅勤務者8名で13ページのケースを2週間で開発

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興味のある方は下記までお問い合わせください。
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2014年10月26日

【もしベビ】「育休世代」のジレンマ

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書)を読みました。

【要約】
女性のキャリアと育児の両立は、1991年の育児・介護休業法の制定および改正によって、制度面での充実は図られてきた。しかし女性の62.0%、制度の恩恵を受けられるはずの正社員でも52.9%が第1子の出産後1年以内に仕事を辞めている(国立社会保障・人口問題研究所の第14回出生動向基本調査)。加えて管理職の女性比率は6.8%(厚生労働省平成23年度雇用均等基本調査)と、先進国でもトップクラスの女性“非”活用国である我が国において、制度が整った後に就職し(1978年以降生まれ)、高学歴で就職活動では所謂「勝ち組」で仕事への意欲に燃えていた女性ですら出産後に退職に追い込まれるという現象を、社会構造の問題として分析している。

女性の両立問題を取り巻く要因を、「職場環境要因」「育児資源要因(含む夫の育児参加と実家サポート)」「意識要因」に分けて分析している。そして、このうち両立の阻害要因として決定的なのは「職場環境要因」であり、その現実に直面した女性が自分の仕事への意識を下方修正することで適応しているという事実である。高学歴女性は特に学生時代から就職(という社会への入り口)の段階では男女平等が当たり前で育ってきているケースが多いため、出産後に初めて女性に著しく偏った育児責任への期待という不平等な社会の実態に直面し、適応不全を起こしやすいという指摘は納得性が高い。そしてその事実に直面したときに、エンドレス残業に代表される会社へのフルコミット体制を前提とした会社人間的価値観に疑問を抱き、「そこまでしたくない」という想いを抱いて、「降りて」しまうということである。

ちなみに興味深いことに、育児資源要因のうち夫の育児への関与はほとんど影響していないそうで、というのも「いなくても何とかなる」からではなく、「最初から期待していないのでガッカリもしない」からなんだそう(うーん)。

【もしベビ的感想】
産後3か月くらいから、ママ友のリクエストで子連れOKのマネジメント勉強会をはじめました。普段は主に男性を相手にマネジメント教育をしているので、女性を相手にしたときに何が変わるかな?という好奇心が発端でしたが、勉強会を続ける中で経営資源としての女性の可能性を強く感じています。女性たちはコドモを持っても意外と働く意欲は持っていますし、時短勤務を希望する背景も勤務時間を「短く」したいわけではなく、18-21時の育児ラッシュアワーに自宅にいたいだけであるということ、そしてマネジメント教育次第で経営者思考になり経営に資する存在になるようふるまえるということ、を実感しています。ですのでこの本の結論には非常に同意するし、職場環境要因を改善することで宝の山にアクセスできると考えています。このあたりはまた別途。

「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書) -
「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか? (光文社新書) -


posted by Kokubo at 19:09| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | もしベビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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