すっかりブログはご無沙汰しちゃってますが、たまには近況などを。
この4月に
静岡県立大学に赴任しまして、初めての学部教育に試行錯誤の日々です。
教員や研究者としてはひよっこもいいところなのですが、静岡気質なんでしょうか、同僚の先生方や職員、学生には大変恵まれておりまして、未熟ながらも貴重な経験をさせていただいてます。
特に学生が素晴らしいんですよ。
赴任するまでは社会人教育ばかりやっていて、社会経験のない学部生と触れることがほとんど無かったこともあり、「今の若者」に対する世間のネガティブな情報を鵜呑みにしてたんですが、いやー、いい意味で大きく裏切られました。彼ら彼女らを見ていると、日本の将来に希望を持つことが出来ます。(赴任前にもこれくらい元気な学生に会ってはいましたが、マイノリティだと思っていたんですよね。全然違った。)
そんな学生たちの活動を少しご紹介します。
まず、ゼミ生S木くんが手掛けている、経営情報学部ゼミ活性化プロジェクト
「Party Lab.」。
私たち国保ゼミ生は、経営情報学部生がよりアクティブに研究に励んでほしいという思いから、7月7日に経営情報学部ゼミ活性化プロジェクト「Party lab.」を企画しました。プロジェクトの目的は、ゼミ内での議論を活発化させるために親睦を深めることと、それぞれの目標を伝え合い、共有することでした。プロジェクトの準備にあたって、経営情報学部のほぼすべての先生方の研究室に直接伺いし、ご意見をいただいたり、支援金をいただいたりしました。また、何人かの学生からヒアリングし、ニーズや現状の把握にも努めました。プロジェクトを企画する過程では、ただ闇雲に方法を議論するのではなく、今まで勉強してきたものを活かして経営学の理論に沿って考えました。プロジェクトのミッションは何か、顧客は誰か、顧客の価値は何か、私たちの成果は何かなど、常に自分自身に問いかけ、よりよい価値を提供できるように工夫を凝らしました。準備の途中、プロジェクトの方向性や提供できる価値の捉え方などで、難航した時もありましたが、国保先生の後押しのおかげで予定通りの実施ができました。(静県大広報誌より抜粋)
この活動の素晴らしいところは、ゼミ生のS木君が自分で問題を発見(自学部の活性度が低い、学生同士の情報共有が出来ていない)し、その対策を自分で考え、そして自分たちだけで実行に移したところです。このプロジェクトを実施するにあたって、S木君をリーダーとするゼミ生は、他ゼミの学生や当学部の全教員にアポを取ってニーズのヒアリングをしていました。その過程で、「活性化」と一言でいっても色々な価値観があることを学び、各教員がどのような想いでゼミを運営しているかを知り、支援金(教員からのカンパ)をもらうことの意味を考えたりしたようです。(ちなみに私は着任早々で先生方の顔と名前がまだ一致しない時期だったのですが、彼らからヒアリングの様子を聞いたことで、各先生のいいところを知ることが出来たのが収穫でした。)
次は
「大学カイゼンプロジェクト」。
もともとは、学生たちが「学生室が〜してくれない」だの「学食がまずい」だの「大学の規則が〜」だの大学に対する不平不満をもらしていたのを聞き、「文句言うなら、自分で行動してからにしなさい」と私が言い放ったのがきっかけでした。私は行動していない人の愚痴を聞くのがかなり嫌いなんですけど、それだけでなく、学生たちに自分の働きかけで周りが変わっていくことの楽しさを知って欲しいなと思いました。今振り返ると、学生たちにとっては「自分たちで環境に働きかけてもいいんだ」という気付きは大きかったのだと思います。最初は恐る恐るでしたが、幸い当学は職員も教員もすごーく学生に協力的でして、学生たちが自分で設定したカイゼンのテーマを追いかけることをとても温かく支援して下さり、今では自信を持ってガンガン進めています。
そんな中でW辺さんは「逆走問題解決プロジェクト」を、I川くんは「学食の満足度向上プロジェクト」を、S木くんは「学内携帯電波カイゼンプロジェクト」を手掛けています。
「逆走問題解決プロジェクト」は、大学内にある一方通行の道路を原付で逆走する学生が居るという問題にを扱うプロジェクトです。学生に対する意識調査(アンケート)を実施したうえで、W辺さんがとりうる対策を提案にまとめ、学生部や教職員との意見交換の場を10月に実施しました。そしてW辺さんの提案をたたき台に、「学生の問題認識が薄い一方で、学生部による周知活動の効果は見られるため、さらに徹底した告知活動が有効ではないか」などの意見交換が活発に行われました。
W辺さんは最初はちょっと頼りなかったんですけど、このプロジェクトを通じて眼に見えて成長していきましたね〜。人の成長を見るのはとても楽しいです。また、このいち学生の発案で始まった意見交換の場に、教員や事務職員の方が総勢20人ほど来て下さったことに、私はとても感動しました。学生のことをしっかり考えている、いい大学だなあと思います。そんなところで働けて幸せ。
I川くんの
「学食の満足度向上プロジェクト」は、学生や教員が英気を養う場である学食をよりよい場にすることで、よりよい研究教育活動に繋げていきたいという目的のプロジェクトです。学食に関するアンケート結果の分析、利用者の動線の分析などをやっています。たまたま大学が大学記念行事予算を募集していたので、カイゼンの予算を得るために提案書を申請しているところ。また、うちの学生だけでは専門知識がないことで限界を感じていたのですが、たまたまtwitterで知り合った静岡出身・名古屋在住の若い建築家集団
studio nagoya さんが協力を申し出てくれて(!)、現在コラボレーションしながら提案をまとめているところです。
←打ち合わせw/Pizza。
studio nagoyaさんの素晴らしいところは、I川くんたちの目的を理解した上で、敢えて彼の希望とは違う、でもさらに目的達成度が高い提案を低コストで出してくるところ。言われて気付くのだけど、こちらとしては何か新しいものを作ることが目的なのではなく、現場で働く人や顧客をよりhappyにすることが目的なので、目的が達成できるならアプローチに拘る必要はないんですよ。そういうところまで、ちゃんとヒアリングして提案してくれるのはほんと有難いし、今年大学を卒業したばかりの人とは思えないプロ意識だなあと思っています。
S木くんは
「学内携帯電波カイゼンプロジェクト」を。当大学は茶畑を開墾した丘の斜面に建っているため、携帯電話の電波状況が最悪でした。かろうじてドコモは入るけど、ソフトバンクとauは校舎内で使えなかったんですよ・・・。圏外ってすごーく不便です。これも最初はぶつぶつ文句を言っていただけだったのだけど、周りの大人や大学職員の方の力を借りてわいわい頑張った結果、この秋からソフトバンクの基地局が設置され、auも来春を目処に改善されるそうです。圏内が当たり前の人には分かんないかもですが、これはかなりの感動の瞬間です。
なお、ゼミ生がこれらのプロジェクトを進めて行く際には、要所要所でその道のプロを呼んでお話を伺う必要に迫られました。そして、せっかく人を呼ぶのにうちのゼミ生だけに聞かせるのは勿体ないよね〜、もっと広く他ゼミや地域の人も一緒に話を聞いちゃっていいんじゃない?減るもんじゃないし!くらいのノリで、ゼミ生が企画と運営を担い、公開でゼミをやる「オープンゼミ」というイベントを企画、実施しています(学生が仕切るので、私は後ろで見てるだけなんですが)。これまで4回を実施してきましたが、だんだんゼミ生が企画に熟練してきて、先日の第4回は大学内外から約50人がお越しいただけました。地域の人の中には、うちのゼミ生に会うことが楽しいと言って下さる方も少なくありません。
ちなみに、これまでの企画。
第1回 「やりたい仕事を自分で創る!!」
〜病児保育NPOを立ち上げたマーケッター岡本氏に学ぶ経営とキャリア〜
第2回 「問題の本質はココにある!!」
〜カイゼンのプロフェッショナルに学ぶ着眼点と問題の整理方法〜
第3回 「ヒトが集まる“面白い”場所をつくるには?」
〜“交流する飲食店”パクチーハウス東京の店長に学ぶ店づくり〜
第4回 「誰でも街は変えられる!!」
〜NPO事務局長に学ぶ絶対成功するプロジェクトの作り方〜
詳細は
国保ゼミブログ(学生が管理)にも載っておりますので、そちらもよろしければどうぞ〜。
しかし、学生、教員、職員、地域の人が一緒になって何かを学ぶ場というのは、とても刺激的。そして(私も人に言われるまで気付かなかったんですけど)そんな機会は他にあんまり無いようで、新聞記者さんが取材に来てくれたりしました。
そんな感じで、うちのゼミ生はなかなか忙しくも楽しくやっているようです。
私としては、ゼミ生がどんどん成長してきて色々勝手に動いてくれてるので、自分の仕事がどんどん楽になっているのが有難いです(笑)。