今年もリンゴの季節になりました。
スーパーの店先に並ぶリンゴを見て、昨年仕事で訪れた青森県の相馬村を思い出しました。
青森県の相馬村(2006年2月に市町村合併により弘前市に再編)は、人口約3,900人、1,110世帯の農村です。同村の農業粗生産額の82.4%は果実(うちほとんどがリンゴ)で、リンゴ生産規模は県下NO.1、農家一戸あたりの生産農業所得も県内でトップクラスです。そんな組合員を抱える相馬村唯一のJA「JA相馬村」は、自己資本率37.5%で、高い配当性向と高い組合員一人当たり出資額(全国平均の3倍以上)を誇っています。現在、多くのJAが単独での経営に耐えられずに合併しているという状況を考えると、このJAがいかに優秀であるかが分かります。
さてそんな現在の繁栄は、一連のリンゴ産業の立て直しが契機になっています。台風による被害で一度は危機に陥った相馬村ですが、JAや住民が一丸となった再興が功を奏し、現在ではその成功の秘訣を学ぼうと多くの視察団が訪れるほどです。生食用リンゴの販売もさることながら、生食用としては出荷できないスソリンゴを利用した直売所や加工品の事業も成功しています。生食用以外で利用する方法を確保することで、生食用リンゴの選別を厳しくし高品質の商品としてブランド販売することが可能になりますので、単なるお小遣い稼ぎ以上の効果が見込めるのですよね。
そんな相馬村のキモとなっている加工事業(主にリンゴジュース)をいちから立ち上げたSさんに取材しました。新しいことを始める際には、いつも苦労が伴います。ましてや古いしきたりが強く残る地域で、女性で、というのは大変なことだったろうと思います。今では村の看板事業となっている加工事業ですが、試行錯誤を繰り返しながら進化してきたのだということを伺いました。
その後数人にインタビューを行い、ケースとして仕立て上げました。
(なおそのケースは、JA内部で経営教育用の資料として使われています。)
ちょうど相馬村を訪れたのがリンゴの収穫時期だったため、直売所には色とりどりのリンゴが溢れていました。いくつか買って帰ったのですが、採れたて新鮮であったこともあるのでしょう、びっくりするくらい美味しかったです。私は元々そんなにリンゴが好物というわけではなかったのですが、相馬村のリンゴには、リンゴってこんなに美味しかったのかと思わされました。しかも安い。冗談抜きでスーパーのリンゴはもう食べられなくなりました。
そんなことがあったので、今年は店頭にリンゴが並びだしてもあまりスーパーでは買う気になれませんでした。
そしたら先日、Sさんから宅配便が届きました。
大箱いっぱいのリンゴです!嬉しーーー!!
美味しいリンゴをいただいたことも嬉しいですが、1年前にお会いした私のことを覚えていてくださったんだということが心から嬉しかったです。私が相馬村のリンゴを美味しい美味しいと言っていたことも覚えていてくださったんだなあと。ほんと有難いです。リンゴ好きのオットも大喜びでした。
仕事を通じて素敵な人に出会えて、しかもこうやって交流が続く。自分は幸せな仕事をしているなと、つくづく思います。私は自分が目立つことには全く興味がなく、寧ろどちらかというと人前に立ってレクチャーをすることはキライです。ですが、こういう日本の各地で地道に頑張っている方々に光を当て、ケースを書いて、ディスカッションを通じて学ばさせていただく場を作ることは本当に楽しい。それだけでも楽しいのに、さらにケースの対象となった方に喜んでいただけて、永いお付き合いをさせていただける。研究者として最高に幸せな瞬間です。
そんな想いを込めて書いた礼状と私の地元神奈川の銘菓「鳩サブレー」、Sさんが喜んでくださるといいのだけど。
posted by Kokubo at 03:32| ☔|
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日常と思考
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