2013年08月25日

オランダのフューチャーセンター訪問レポート

今年の短い夏休みは、ドイツのDüsseldorfで過ごしました。
Düsseldorfはオランダの国境に近いので、ついでにAmsterdamから電車で2時間くらいのBredaという町にある、「The Shipyard」と呼ばれるDutch Tax & Customs Administration(オランダ国税・関税庁、以下DTCA)というお堅い感じの組織の専属フューチャーセンターに行ってきました。今年で設立10年だそうです。

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Bredaは観光地ではなく、駅前に大きな公園と河のあるのどかな郊外の町という風情。The Shipyardは写真左奥に見える、もともとDTCAのオフィスだったという古い邸宅を使っています。

このフューチャーセンターについては、こちらの経産省の報告書が一番詳しいと思います。
欧州におけるイノベーションと知的資産活用等に関する調査報告書(欧州のフューチャー・センターに関する実態調査) 2008年
6.1 THE SHIPYARD (Breda, the Netherlands): Future Center of the Dutch Tax & Customs Administration “The thinking power of people”(27ページ〜31ページ)

通称でありコンセプトである「Shipyard」とは造船所という意味で、DTCAとその社員を船と船員に喩え、「船員や船が調子が悪くなったときに修理に訪れ、また元気になって出航していくための場所」と自らを位置づけているとのこと。そのため内装には船や航海をイメージするものが多くあります。また案内をしてくれた方は、「break patterns」「license to disturb」というフレーズを何度も口にしていましたし、建物の中にはそのための仕掛けがちょこちょこ見られました。確かに直面している課題を乗り越えるためには、これまでの思考の枠に留まらず柔軟に考える必要があります。そして創造的なアイデアのためには、まずは「この場では何を言っても安全なのだ」と参加者に思ってもらうことが大事だということで、そのためにセッションでも準備とイントロダクションを丁寧に行っているという印象を受けました。例えば、参加者はまずシアタールームに案内されます。そこで「これから冒険の旅に出るんだよ」というメッセージのショートフィルムを見ることで、日常業務を離れ創造性を発揮する場に来たのだという意識づけをします。

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入り口を入ったところにある象徴的な船の絵
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「license to disturb」のサイン
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「break patterns」の例、整然としていないコート掛け
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シアタールーム

一軒家なので部屋数は多く、3階建てでワークショップ用の部屋数は15個くらいでした。そして各部屋が別の目的に使いやすいようにカスタマイズされています。

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ライティングで雰囲気の変わるブレスト用の部屋
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プロトタイプ作成のための部屋
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落ち着いて深い話をするための薄暗い部屋
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PCを使って無記名投票が出来る"Harvest"の部屋。机にはリンゴなどの収穫に使う木箱を利用
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"Harvest"の部屋の壁には、過去の参加者が具体的な"Harvest"を書いている
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一見落ち着いた書斎風、でも暖炉におもちゃの猫が置いてあったりとbreak patternsのメッセージが隠れている

素敵だったのは建物に入ってすぐに通される部屋で、50個くらいあるマグカップの中から好きなものを選んでコーヒーマシンでコーヒーを淹れて、雑談しつつ飲むことが出来ます。この時点で既に自主性を求められるし、そのワクワク感も同時に味わえるように思います。コーヒーコーナーは各階にあり、人がなんとなく集う場になっているそうです。他にもこの部屋はこんな目的で、こんな工夫があってね・・・という説明を本当に楽しそうにしてくれました。当事者が楽しそうなフューチャーセンターはいいですね。

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自主性を発揮できる入り口横のコーヒーコーナー
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ダイニングコーナーの窓にはスタッフの1人が描いた絵が

話を伺いつつ、結果だけを見るとすごく洗練されて完成度が高いものに見えるけれど、実際には社員の方が2人で(うち一人はArt School出身)あーでもないこーでもないといいながらDIYで試行錯誤を重ねた結果なんだなということがよくわかりましたし、The Shipyardの素敵空間を支えているのは、こういうトライ&エラーのマインドだなと感じました。というのも、上記の2008年の報告書に載っていたScenario Roomsはどこかと尋ねたときに、「ああ、あれは去年辞めたんだ。今はもっと稼働率のいい部屋になっている」という回答が返ってきたから。このやり取りから、常に改善し変化し続けることを躊躇わない姿勢を感じました。場というものは、完成した瞬間から陳腐化が始まると思っていますが、それを防ぐためにはこういう現場の人の努力が必須なのだということを改めて確認。まあでも、「型を破れ」のような台詞を、型にはまっている人に言われることほど白けるものは無いですよね。

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オフィス。個人的にはこの部屋が一番好きでした。
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帰り際に参加者に評価をしてもらい、定期的に集計しているそうです

このフューチャーセンターはDTCAから予算をもらって運営しているので、営利目的のワークショップや場所貸しはしていないとのこと。そのほうがDTCA社員にとっては安心して使える場ではありますが、少し勿体無いような気がするのと、コストセンターだとDTCAからの予算カットが怖くないかなーと思いました。その分フューチャーセンター側も成果にシビアになるのでいいのかもしれませんが、成果指標を間違えると本来目的を果たさなくなるので(例えば入居率で成果を測られるインキュベーションセンター等)、そこはどうしているのかは気になります。あと、スタッフは、その日お会いしたのは3名でしたが、実際にはかなり多くの人(何百人というレベル)が関わっているとのことでしたので、ボランティア等をうまく活用しているのだろうと推測します。別団体を同時期に受け入れるということもしていないとのことですが、それでも年間100回くらいのセッションが開催されているとのことで、丁寧な事前準備までを考えるとフル稼働といえるでしょう。それくらいの稼働率があるのであれば、予算獲得はやりやすいのかもしれません。DTCAの社員にとっても、「プロジェクトが煮詰まったらあそこにいこう」という存在感になっているようで、そういう正当性を確立できてしまえば強いですね。

ところで訪問時には、お土産代わりに国保ゼミのフューチャーセンターの説明プレゼンテーションをしたのですが、ファシリテーションや運営を学生が担っているのは素晴らしいというコメントをもらいました。オランダでも若年層の就職難が社会問題になっているようで、学生が会社というものを知るいい機会になるのではないか、また大人にとっても凝り固まった頭をやわらかくしてくれるいい刺激になるので、うちも学生の力をもっと使いたいんだけど、とのこと。何がそんなに難しいの?と訊ねたところ、学生が謙虚じゃないんだそうです(爆笑)。これは学生に限った話ではないけれど、確かに他者から学ぶ姿勢がない人はいい貢献をしてくれないですね。

ところで、どうしても充実の部屋数や凝った内装に目を奪われますが、話を聞いてみると、これらは参加者の意識の転換や目的別のディスカッションをやりやすくするための仕掛けに過ぎず、箱さえあれば必要なディスカッションが勝手に生まれるとは決して考えていないことがわかりました(やっぱそうよね!)。目的に沿ってカスタマイズされた箱があれば確かにやりやすくなるけど、どちらかというとどんな内装があればどういう効果があるのか、内装に依存せずその上でどういう工夫をしているのか、というヒアリングが出来たことは収穫です。そして、そういう話をしながら私が考えていたのは、この目的によって部屋を使い分けるという発想は、ダイニングルームやリビングルームが分かれている西洋の発想なので、ちゃぶ台や座布団やお布団によって、1つのタタミ部屋がダイニングにもリビングにもベッドルームにもなる日本の文化的背景を考えると、部屋そのものを変えなくても小物類で工夫すればいいのではないかということ。うちのフューチャーセンターは1部屋しかないことを残念に感じていたけれど、日本でやっている限りはそれほど制約にならないのかもと思えました。人数も「経験的に、創造的ディスカッションが目的なら20人は適切な規模」と言われましたので、今の20人定員(夏場は15人)というのはいい線だな、と。こういう具体的な数字や閾値や、機能しているメカニズムが知れるのは、事例視察の大きな価値だと思います。おかげさまで今後の方向性のヒントを得ることが出来ました。

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2013年03月28日

いってらっしゃい2013

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国保ゼミ2期生の4名が卒業しました。

先輩から後輩にバトンを渡し、後輩が先輩からバトンを受け取る春合宿(詳細はこちらに載っています)では、4年生にはゼミに入っての2年間でどういう学びを得たかプレゼンしてもらいましたが、遊びに来てくれた国保ゼミ1期生であり、現在は東京で働いているS木くんが後輩たちを見て、「失敗慣れしているというのがいいですね。自分で行動して失敗するという経験の上に自信を培っているのが、意味があると思う」という感想をもらしていました。うちのゼミ生の傾向として、成功自慢ではなく、失敗経験(とそこから学んだこと)を話す傾向があるんですが、これがタフである所以だと思っています。転んでも立ちあがれることを知ってるから、転ぶことを怖がらずに済むし、立ち上がる方法も分かっているから復活が早い。それは人としての強みだと思います。

社会に出るといろんなことがあります。大学の中では自主性をとても大事にしていますが、未熟なうちはそれが仇になることもあるかもしれません。理不尽なお客さんや、モチベーションに配慮してくれない上司もいます。頼れる先輩ばかりではないかもしれません。そしてそういう環境の中で、残念ながら身体やメンタルを壊す人もいます。これから先は、何があるかわからないグランドラインなわけですね。大学を卒業するということは、良くも悪くも、そういう世界に踏み入れることだと思います。

でも、転んでも歩き出せるタフさと、周りの人の力を借りる謙虚さがあれば、なんとかなるでしょう。そこはこの2年間で十分身に着けているはず。なので、去年も同じことを書いたけど、ゼミ生の卒業は「さよなら」というお別れではなく、扉を開けて社会という大海原に足を踏み出そうとする学生を「いってらっしゃい」といいながら見送る感覚です。ワンピースが見つかりますように。ちなみに去年いってらっしゃいをしたS木くんは「大学時代も楽しかったけど、社会人の今はもっと楽しい」と大変そうだけど充実した表情で話していて、いいねえと思いました。2期生もそうなってほしいものです。


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そして4期生は、ようこそ国保ゼミへ。これから一緒に過ごす2年間が、皆にとって実り多きものになりますように。1期生と2期生の休学組も大学に戻ってくるので、2013年度はこれまで以上に賑やかな1年になりそうです〜。


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2013年03月19日

フューチャーセンターを立ち上げてみた

静岡県立大学経営情報学部の国保ゼミでは、フューチャーセンターを定期的に開催しています。最近フューチャーセンターについての質問をたびたび受けるようになったため、定期フューチャーセンターの開催に至った経緯を記録しておこうと思います。フューチャーセンターの立ち上げは、私というより皆の協力ありきで成し遂げられたことなので、その皆の貢献を記録しておきたいなという気持ちです。あまり概念化されておらず、事象を時系列に書いていっただけですが、参考になりましたら幸いです。

目次
(1)立ち上げたきっかけ
(2)立ち上げ前にやったこと
(3)前例のないものをつくるために
(4)立ち上げてから考えたこと
(5)立ち上げから1年経って考えること
(6)具体的な活用事例

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最近のフューチャーセンターの様子



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フューチャーセンターを立ち上げてみた(6) 具体的な活用事例

この1年間で、国保ゼミのフューチャーセンターを活用した事例としては次のようなものがあります。この他にも、新商品/イベント企画などに対するブレインストーミングや、プロジェクト遂行上の課題の整理と対策の検討などを日常的に行っています。


@茶の和プロジェクト
「茶の和」プロジェクトは、2011年秋、静岡県立大学の経営情報学部と食品栄養科学部の4名による「生まれ育った静岡を自慢するきっかけになるようなお土産を作りたい」という想いから生まれたプロジェクトです。学生たちは静岡の良さが何かということから検討を始めましたが、潜在顧客のヒアリングやお茶農家の現場訪問を通じて、静岡では当たり前の緑茶が、時代の変化と共に消費量が減り、お茶業界もいろんな問題を抱えていることなどに気づいていきました。その結果、学生たちは自分たちが享受した「お茶が結ぶ人のつながり」をもっと広げていきたい、自分たち若い世代がお茶の素晴らしさを発信することで、若い世代や他県の人にお茶に関心を持ってもらいたい、お茶業界やお茶農家さんに元気を与えたいと考えるに至り、「茶の和」という商品コンセプトを考案しました。

この商品は、本当に多くの人の協力によって生まれました。フューチャーセンターで企画をプレゼンしてコメントをもらったり、参加者からバイヤーさんや菓子メーカーさんを紹介してもらったり、企画が頓挫したときにフューチャーセンターで相談することで挫折を乗り越えてきたり、という動きが見られました。販売開始直後の3日間は学生たちが実際に売り場に立って商品コンセプトを説明し、当初目標としていた150個を上回る数を売り上げました。

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A地域コラボプロジェクト
地域コラボプロジェクトは、地域の方々と学生とが一緒になって大学がある「草薙」地域を盛り上げたいという思いから生まれたプロジェクトです。このプロジェクトが始まる前は大学と地元のお店のつながりはほとんどなく、それを残念に思った学生の発案で始まりました。具体的な活動として、フリーペーパー「つながるくさなぎ」の作成とイベントの企画運営をやっています。フリーペーパーの作成には記事の企画から取材・撮影までを全て学生が実施、イベント企画では、焼津市を活性化プランコンテストの運営、大学の地元草薙商店街の夏祭りや、バルイベント「草薙くいだおれ祭」のなどがあります。

この「草薙くいだおれ祭」の企画段階ではフューチャーセンターを活用し、チケット販売や広報面での改善点の洗い出しや、当日起こりうるリスクの洗い出しと対応策を考案しました。このイベントは学生が主体と企画・運営したことがメディアの注目を集め、静岡新聞(1/4・1/8)や毎日新聞(1/9)、SBS放送(11/12・1/9)など多くの新聞やテレビに取り上げられました。その結果、「草薙くいだおれまつり」では17店舗の地元商店が協力し、当日のイベント参加人数が300人を越えチケット販売だけで70万円超を売り上げました。なおこのイベントは、多くの店舗の新規顧客開拓につながったようです。

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BJOBコン
JOBコンとは静岡県内の企業の経営者と就職活動を目前にひかえた大学生との間で対話する場を創り出すことで、「大学生に『就職する目的』について考えるきっかけをつくること」を目的として生まれたプロジェクトです。以前よりフューチャーセンターに参加していたタリーズ店長の増田久美さんが、アルバイトの大学生と接する中で「どの企業に就職するか」という手段ばかりに注目していて、その先の「就職する目的」について考えていないことに対して抱いた問題意識をもとに企画されました。増田さんは、イベントの概要を考えるためにフューチャーセンターに相談を持ち込み、実際に経営者と話す場のニーズ調査や、どの程度の参加費まで負担するかなど学生からの意見を集めました。また、企画が煮詰まったときに再度フューチャーセンター訪れ、目的に立ち戻ることで突破口を見出したということもありました。イベント当日は大盛況で、2013年2月には第2弾も実施。このときはフューチャーセンターを通じて知り合った学生がスタッフとして参加するという動きも生まれました。

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2013年03月18日

フューチャーセンターを立ち上げてみた(5) 立ち上げから1年経って考えること

2011年9月に始まった国保ゼミの定期フューチャーセンターは、2012年9月で1周年を迎え、ささやかなパーティを行いました。1年経った現在、国保ゼミのフューチャーセンターがどのような存在として整理されているかについては、大崎さんをはじめとする国保ゼミ3期生が書いた文章が非常に的確なので、それを引用して紹介します。

--------------(引用開始)--------------

国保ゼミフューチャーセンターとは:
『未来への提案を継続的に生み出す場の創出、「提案ができる人」の人材育成』を理念に、その手段として静岡の学生・企業・地域の社会人が共に学び成長するための対話の場である「フューチャーセンター」を国保研究室として開催している。学生と社会人という多様なバックグラウンド、多世代の人材が入りまじり、同じ目線でかつ楽しそうに対話をしつつ学んでいる光景が、静岡や日本に広がることをイメージしている。

国保ゼミフューチャーセンターの機能:
機能その1:社会と大学の境目を緩やかにし、社会人と学生が共に学ぶ場

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人材の教育は、主に教育機関と企業(人事部)が担っている。特に社会人としての教育は企業が自社内で行ってきた。しかし不景気や指導側の人材不足で昨今は人材教育コスト、特に経験のない新卒人材の教育コストの負担が苦しくなっている。大学では、人材育成に必要な資源を民間の研修機関よりも安価で提供することができる。そこでこれらを別々に行うのではなく、両者が一緒に行うことでwin-winの関係を築くことができると考えた。

そもそも文部科学省によると、大学の役割とは「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を発展させることを目的」であり、なかでも公立大学は、「地域における高等教育機会の提供と、地域社会での知的・文化的拠点として中心的役割を担ってきており、今後とも、それぞれの地域における社会・経済・文化への貢献が期待されている」 とのことから、本来目的の範疇である。しかし現在、一般的には社会と大学は乖離していると言われており、その現象によって以下のような問題が引き起こされている。
 ・大学で学んでいることが、実際の社会の中でどう活きるかイメージできない
      →学習意欲の低下
 ・社会人と大学生との接点が少ない
      →なりたい自分像(ロールモデル)がうまく描けない
      →社会・社会人に対する過剰な恐怖心が生まれる

国保ゼミのフューチャーセンターは、この問題を解決する場としても有効である。また、国保ゼミのフューチャーセンターでは、双方向性や相互作用といった要素を重視しており、誰かが講師を務めるわけではなく、ただ議論の進行を手助けするファシリテーターがいるだけである。社会の問題や人材に必要な能力は多様かつハイレベルになりつつあるため、過去の知識を教えるだけの講師ではなく、当事者たちが自分の力で答えを見つけ出すスタイルの学習方法がより効果的であると考えられる。

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また、大学は地域産業の人材供給源でもある。経済産業省では、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、2006年から「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成される「社会人基礎力」を提唱しており、「基礎学力」「専門知識」に加えて、それらをうまく活用していくための「社会人基礎力」を意識的に育成していくことが今まで以上に重要であるとしている。学生たちはフューチャーセンターで実社会での問題や意思決定の場面に接したり、自らのプロジェクトを実施したりすることで、大学の授業だけでは学べないこれらの力を培うことができる。「学生は、高校までは正解のある課題を与えられて、ゴールにどうやって到達するのか教えてもらえる環境にいるが、社会に出れば、ゴールに到達する方法はもちろん、ゴールそのものも自ら考えなければいけない。半分は大学、もう半分は社会という国保ゼミのフューチャーセンターでは、そのためのトレーニングをすることができる。まずは一歩を踏み出すためのセーフティゾーンがフューチャーセンターで、そこで慣れたらさらに外へ出て行けばいい」とは国保先生の談である。

機能その2:継続的な未来への提案とアクションを生み出す場

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フューチャーセンターとは…多様な視点から、問題を解決するためにポジティブな対話をする場である。国保ゼミのフューチャーセンターは、知識を得るだけでなく、知識の使い方を学ぶ場である。培った知識を活かして、実際により良い未来を創るために行動することで知識をより深めることができる。 

--------------(引用終)--------------

ポイントは、大学(教育機関)と社会を繋ぐ場であり、活動を通じて人材育成をする場であるというところでしょうか。そして成果としての問題解決や未来への提案、ですね。


(6)具体的な活用事例
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2013年03月17日

フューチャーセンターを立ち上げてみた(4) 立ち上げてから考えたこと

見切り発車で始めた定期フューチャーセンターなので、細かいところはほぼすべて動きながら考えました。代表的なものは当日のオペレーションです。

社会人が参加しやすいよう夕方開催にしたものの、夕方はお腹がすきますし、お腹が空いているときにいい議論はできません。なので途中からサンドイッチのような軽食を地元の商店街で調達して出すようにしましたが、実際にやってみると一緒に食事をするというのは場が和むので、いいアイスブレイクになることが分かりました。しばらくすると社会人参加者から、軽食を出してもらうのにお金を払わないのは却って参加しづらい、参加費をとってくれたほうがありがたいという声が上がりまして、軽食代をいただくことにしました。ただ学生が参加しやすいよう、収入差のある学生と社会人で傾斜配分をする共済型です。ここで金銭的に自立するしくみになったことで、運営もぐっと楽になりました。食事係はその日の参加費を免除するというインセンティブを設定して、毎回食事を準備する係を学生が持ち回りでやるシステムも取り入れました。

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食事の準備。

部屋のキャパシティ的に上限は20人なので、定員20人とし、超えると参加受付をストップします。開催通知と参加の申し込みはfacebookのKOKULABOグループ機能で管理しています。これは食事の準備をするためにあらかじめ参加人数を把握することを目的として導入したしくみなのですが、参加人数が予測できることで運営は楽になり、また事前に誰が参加するかが実名で分かることでさらに参加を促進するという効果もあるようです。ちなみにこのグループをつくったあたりから、「KOKULABO」という概念が生まれました。直接的には国保ゼミの学生とそれを取り巻く社会人のバーチャルコミュニティなんですが、「教育現場と社会との溝を埋めるために学生と地域の社会人が交わる場所」として定義しています。

また、フューチャーセンターの中での時間の使いかたも試行錯誤の中で決めていきました。GEさんに伝授してもらったGE式ワークアウトをベースに、ブレインストーミングと問題解決のやり方を基本形にして、テーマによってブレストか問題解決かを使い分けています。

しかし1つのテーマに対してのやるべきことはこれで明確になったものの、全体のタイムスケジュールの組み方のようなところはなかなか決まらず、ここが決まってないためにグダグダになるということがしばらく続きました。国保ゼミのフューチャーセンターは学生がファシリテーターを担っており、必然的にプロの場づくりスキルには及びません。ファシリテーターが不慣れで、タイムスケジュールも定型がない、参加者やテーマは当日にならないと分からない、というように不確定要素が多いとカオスになるということが分かりましたので、固定できるところは固定していこうと思い、タイムスケジュールは型を決めることにしました。その結果、現在は以下のような流れで運営しています。
  18:00 開場、受付
  18:30 軽食を食べながら自己紹介でアイスブレイク
  19:00-21:00 ディスカッション(1テーマにつき20-30分程度×3,4テーマ)
  21:00-21:15 参加者同士で気づいたことをシェア

わりと大事なのは、最後に気づきをシェアするところです。ワークショップ技法ではチェックアウトとも呼ばれるようですが、これによって参加者はこの日の経験を俯瞰し、自分の中で意味づけることになり、経験学習サイクルが回ります。ディスカッションだけだともやもやしてしまっても、全体を経験として俯瞰することでスッキリして満足感にもつながるようです。

ところで、一般的なフューチャーセッションでは、プロのファシリテーターが進行を担っていますが、国保ゼミのフューチャーセンターでは学生がファシリテーターをしています。私がやるべきかどうかは少し迷ったのですが、私がいないと回らないフューチャーセンターを創りたくなかったので、学生に任せると決めました。最初はかなり拙い進行で参加者に満足してもらえるものになるのかどうかハラハラしましたが、回を重ねるごとに周りのやり方を見て覚えるのか腕が上がっていきましたし、想定外の学生ファシリテーターならではのメリットもたくさんありました。例えば、学生が運営を担っていると、参加者側が完璧な運営を期待しないので、至らないところがあっても皆でカバーしようという雰囲気が生まれ、皆が主体性を持ち始めるという効果があります。これが企業フューチャーセンターで、プロのファシリテーターが相手だと参加者がお客さんになってしまうというか、サービスを「与える人」と「受ける人」という構図ができてしまう場合がありますが、国保ゼミのフューチャーセンターの場合、参加者が場の雰囲気に責任を感じることで当事者意識が醸成されるようです。だから変な雰囲気になると参加者の誰かが助けてくれる(笑)。

そして国保ゼミのフューチャーセンターにおいては、この学生たちが醸す「完璧でなくてもいい」というメッセージが人を安心させるみたいで、「居心地がいい」「発言しやすい」という感想を、本当によくいただきます。フューチャーセンターの情報発信をしているFuture Center News Japanに載った際も、居心地の良さがフォーカスされました。
抜群の居心地。静岡県立大学国保ゼミフューチャーセンター

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学生ファシリテーター

学生の存在が醸すメッセージは意外と影響が大きいようで、クリエイティブなディスカッションのために大事なゼロベース思考と上下関係のないコミュニケーションも、実務と組織の経験がない学生がいると難なく実現できます。加えて、人は搾取する意図がない相手を信頼する傾向がありますが、学生は利害関係を感じさせないため信頼関係を構築しやすいようで、初めての参加者ともあっという間に打ち解けていたりします。その信頼関係の上で行われるディスカッションはクリエイティブなもので、以前に地元の海苔メーカーさんが海苔の新商品開発のためのブレインストーミングを学生と一緒に行ったところ、社会人が一人3〜5個のアイデアしか出せなかったのに対し、学生は10〜20個のアイデアを出すことができました。このあたりは"大学生の力を地域に活かす「大学発フューチャーセンター」"にまとめています。

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出てくるアイデアの量は豊富

そして、学生のとても大きな役割として「未来を可視化する」という点があります。人間は、これからの未来を生きる存在を目の前にすると、それを無視した意思決定はなかなかしにくいようで、学生がいるとおのずと未来思考になります。加えて、基本的にプロジェクト遂行上の課題を議論するので、一歩間違えるとすごくマイナス思考な場所になってしまうのですが、現実を知らないがゆえに将来に対して基本的にポジティブな学生のコメントは、周りの社会人にもポジティブ思考を伝染させるため、結果的に前向きな場となります(ただし未経験であることを責める人がいると学生が委縮してしまってこの効果は出ません)。これはとても大きな影響があるみたいで、国保ゼミのフューチャーセンターでも学生が少なすぎる日はあまり前向きな議論にならなかったりするのが不思議です。

ただ未来を可視化する存在としては、参加者のマジョリティより未来の可能性が大きい存在であれば学生じゃなくともいいと思います。ある人にエネルギー問題をディスカッションするために地域の人が集うフューチャーセンターを作りたいという相談をされたときには、子どもの遊び場を真ん中に作ったらいいんじゃないかと提案しました。ディスカッションの最中に未来を生きる人が視界に入る、ということが大事だと思っています。

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基本的にポジティブな雰囲気

なお、これらの場の運営方法の具体的な作りこみは漠然とやったわけではなく、フューチャーセンターの立ち上げとほぼ同時期に産まれた1つのプロジェクト(茶の和プロジェクト)を中心に据えて、「このプロジェクトにとって使いやすい場の要件」をフューチャーセンターとして作りこんでいった結果です。具体的なパイロットプロジェクトを持ったことで、漠然としていたフューチャーセンターの必要要件を具体化することができました。なので、これからフューチャーセンターの立ち上げを考えている人は、こういうパイロットプロジェクトを設定するといいのではないかと思います。


(5)立ち上げから1年経って考えること
posted by Kokubo at 08:58| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 地域と大学(フューチャーセンター) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月16日

フューチャーセンターを立ち上げてみた(3) 前例のないものをつくるために

国保ゼミのフューチャーセンターを立ち上げるにあたって、一番苦労したのは、「学生主体のフューチャーセンター」という世の中に前例のないものを作らねばならないという点でした。世の中にあるフューチャーセンターの定義は徹底的に調べ、実際のセッションにも参加しましたが、当時はフューチャーセンター自体がまだまだ曖昧なコンセプトだったことに加え、「学生」という変数が入るといったいどうなるのかが予想できず、なかなか具体的なイメージを持てずにいました。ただ3.11を契機に、目指している将来像はなんとなくイメージできたので、「フューチャーセンターをつくる」というより、その漠然とした自分のイメージを実現することを目指しました。

まず、そのイメージを実現するために必要な要件を洗い出しました。そして最低限の要件として、継続的に続けなければ意味がないと考えました。作りたいのは「イベント」ではなく、「フューチャーを自ら切り拓いていこうとする人や、そんな人たちを全力で応援する人が集まる場」であり、つまり「コミュニティ」です。フューチャーセンターはそのコミュニティの維持装置としての活動であると位置付けると、「定期的に一定数の人が集まること」が絶対に達成しなければいけないゴールとなります。そして、このゴールを達成するためには、何度も足を運んでくれるリピーターをつくらなくてはなりません。リピーターをつくるためには、何度来ても面白い(飽きない)場をつくることが必要です。飽きない場をつくるためには、そこに集まる人が面白いこと、プロジェクトが具体的に進んでいることが見えること・・・・というように、具体的にやるべきことをブレークダウンしていきました。

また、同時に、作るべきコミュニティのビジュアルイメージを作りました。そこには@どんな人がいて、Aどんな表情で、Bどんな会話をしているかを、具体的な一枚の絵としてイメージできるまで考えました。

例えば@は、学生と社会人です。学生はまずはゼミ生、将来的には他ゼミ生、他学部・他大学の学生に足を運んでもらいたいと考えました。ただこのフューチャーセンターは大学の中なので、学生の参加はそれほど難しいことではないと思いましたし、だからこそ定期的に開催しても参加者が全くのゼロということはないだろうと考えました。人がいないコミュニティほどつまらないものはありませんが、大学でやる限りにおいて学生に関してはおそらく大丈夫だし、ここで一定数の参加者が期待できたことは、定期開催が可能だと判断した大きな要因です。

しかし、社会人にとって大学内のフューチャーセンターに足を運ぶのは、ハードルが高いと考えました。物理的・心理的な距離もありますし、社会人は忙しいので時間を投資するだけの価値があると思ってもらえないと2回目はないだろうと。なので、提供価値をちゃんと確立するために、ターゲットを広く構えるのではなく、敢えてターゲットを絞ってそのターゲットが満足するような場を作ることを目指しました。ターゲットを絞るに当たってはあまり迷わず、学生に「社会人ってカッコいいな」と思わせてくれる社会人、としました。これはフューチャーセンターの前身であるオープンゼミを始めたときからの問題意識で、大学やバイトだけでは学生が社会人との接点が少なく、ましてや自分が将来あんなふうになりたいと思える社会人に会う機会がほとんどないというところを何とかしたかったのです。カッコいいというのは、例えば仕事ができるだけじゃなくて楽しんでいる、仕事や社会の愚痴を言わない、学生を下に見るのではなく互いに学び合う姿勢を持ってくれる、行動力があって背中でお手本を示してくれる、そういう人をイメージしました。

そして次に、そういうターゲットに足を運んでもらうために必要な要素を考えるべく、ターゲットのイメージに合う周りの友人に「どういう要件があれば行ってもいいと思うか?」をヒアリングしまくりました。その結果、「そういう人は抽象的な話はあまり好まない」ということが分かりました。こういう人たちはアクションにつながるディスカッションを好むので、「社会をどうしたいか?」という落としどころが見えにくいテーマより、「社会をよくするために自分はこういうプロジェクトを考えているが、実現にあたってこういう課題があるがどうすればよいだろうか」という具体的な実行上の相談に燃えるようなのです。確かに、「社会をよくする」のような人によって定義が異なるテーマですとディスカッションが空中戦になりやすいということが、他のフューチャーセンターを視察した学生のレポートから分かっていました。一方で、具体的なプロジェクトの相談を聞いていると、確かに入口はミクロなんですが、そこからその人の価値観や社会の問題が透けて見えることが多く、「ああ、この人はこういう考え方をする人なんだ、面白いなあ、そういう人と一緒に組むとこういう解決策が打てるなあ」と結果的に幅のあるディスカッションになりますし、相談をもちかけた側としては視点を引き上げられたり協力者が見つかったりという結果に繋がります。これが、面白いのです。なのでディスカッションは具体的なテーマで行う、と決めました。

Aは、「楽しそう」であることをイメージしました。理由はシンプルで、楽しくない場にリピーターはつきませんから。例えテーマが深刻でも、最後は笑って終われる前向きな場になることが必須だと思いました。実際にプロジェクトや事業を進めていると次から次へと問題が降ってきますので、そんな中で自分のモチベーションを保つことは簡単ではありません。だからこそモチベーションをあげたり、ポジティブ思考にシフトするための装置は大事だと思っていますし、フューチャーセンターはそういう場でありたいと思いました。数時間のディスカッションの中で問題解決にまで至るのは現実的ではありませんが、次の一歩が見えたり、その一歩を踏み出すモチベーションを得たりすることはできます。ただ、そのためには批判する文化をつくってはいけません。一見実現が難しそうなアイデアに対しても、「そんなの無理だよ」ではなく、「こうしたらできるんじゃないかな?」という意見が出る風土が必要です。そこで、ここは「できる理由」を考えるために脳みそを使う場にしようと思いました。できない理由を考える場は世の中にいくらでもありますから(笑)、それによって差別化にもなるなと考えました。なお嬉しいことに現在リピートしてくださる方には「ここに来ると何とかなるんじゃないかなと思える、前向きになれる」と言っていただけていまして、それがまさに目指していたところです。

で、ここまで来たらもうBも明確になっています。

実際にフューチャーセンターが動き出してからは、目指すゴールのビジュアルイメージとしての写真も手に入れました。それがこれ。こういう表情の人が社会に増えたらいいなーと思い、ところどころに貼ったり見せたりして、「こういう場を作りたい」ということを伝えるためのツールにしました。
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また、1年以上が経って写真も増えてきたので、最近ではこちらの写真もよく使います。色んな人が一緒に笑っていていいかんじ。ペーターが後ろ向いてるけど(笑)。
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また、ゴールを実現するのは私ひとりの力ではなく、皆で一緒にやるのだということも学生に分かって欲しいと思いました。国保ゼミは個性的な学生が集まりやすく、自分のこだわりを大事にする人たちなので、そういう人たちと同じ方向を向いて進んでいくのはけっこう難しい(笑)。各種のコンフリクトはしょっちゅうだし、私が指示をしたところでまずそのままは実行してはもらえません。別に私の指示には従わなくてもいいけど、皆で作り上げるんだという意識は持って欲しくて、そのために場の象徴となる楕円のテーブルを1,2期生全員でつくることにしました。形としてはハンセンのスーパー楕円なのですが、その楕円の型をベニヤ板で学生が作り、それを渡して職人さんに作ってもらうことに。案の定、この作業の過程でゴタゴタがあったり、適当な仕事をする学生がいてラインがゆがんでいるところがあったり、作ってみたら本家のスーパー楕円とは形が違ったりしたんですけど(笑)、それも全部含めてプロセスを共有できたことがゼミ生間のチームビルディングになったと思っています。自分たちで作ったという感覚はテーブルに対する愛着をもたらすし、ひいては場への愛着に繋がるといいな、と思っています。そして皆で一緒に作業するのはシンプルに楽しいよね。

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テーブルの型どり風景。喧嘩というストーミングからの、ノーミング。

こうやってまとめると順調な感じですが、実際には紆余曲折がありました。上記の思考も最初からあったわけではなく、振り返るとこういうことを考えていたんだなあ、という後付けの整理に過ぎません。そもそも世の中に存在しないものをカタチにするという作業なので、暗中模索というか、何が正しいのかさっぱり分からない状態で動いているので効率も悪いです。フューチャーセンターをやろうと決めたのが3月22日、ゼミ合宿が3月25-26日、設立するぞ宣言をしたのが5月30日、研究室の環境整備をしたのが9月頭、実際に1回目の定期フューチャーセンターを開催したのが9月28日で、その間それなりに時間がかかっています。

一番大変だったのは3月26日から5月30日の間の、フューチャーセンターとしてのゴールイメージをつくるところでした。完璧なイメージができてから始めなければという考えにとらわれている一方で、そもそも参考になる事例がないので、検討会議をやっても全然前に進まない。どうしようどうしよう、と言い合うだけでポイントをおさえられない話し合いが続くという時期がありましたが、そんなときに中村さんに、「とりあえず設立宣言しちゃいなYO!細かいことあとから考えればいいYO!」くらいのノリで言われたことをきっかけに、んじゃまあとりあえず始めて走りながら考えますか、という考え方にシフトして、先も分からないままに5月30日に設立宣言だけしちゃいました。今思うと、これが大きかった。ちゃんとイメージが固まるまで待っていたら、たぶん一生立ち上げられなかっただろうと思います。世の中にないものを作るときは、ざっくりとした仮説で見切り発車して、行動しながら修正するといういわゆる仮説思考は大事だなと思います。

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そんな過程を経て開催された、記念すべき第1回定期フューチャーセンター


(4)立ち上げてから考えたこと


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2013年03月15日

フューチャーセンターを立ち上げてみた(2) 立ち上げ前にやったこと

フューチャーセンターを立ち上げようと決めてから、オープンゼミを1年間運営してきた1期生と、その1期生に憧れて国保ゼミに入ってきた2期生とともに、2011年3月25-26日で震災前から企画していた春のゼミ合宿を実施。その合宿では、国保ゼミとしてのミッションやフューチャーセンターのコンセプトについて徹底的にディスカッションしました。

この合宿には、以前から親交があった中央精工株式会社を経営する中村克海さんが参加してくださり、ゼミのミッションとフューチャーセンターのコンセプトづくりにご協力いただきました。中村さんは「普段と全く違う視点で会社経営を考えられる」(静岡新聞2010.11.22記事)からと、定期的に研究室に遊びにきてくれていたのですが、経営学を学ぶ学生にとっては実際の経営現場の話が聞けてプロジェクトの相談にも乗ってくれる中村さんは貴重な存在であり、憧れの社会人でした。

そんな中村さんの意見が交じったことで、自分たちのやっていること・やろうとしていることの価値を客観的に確認することができたように思います。また、学生や私だけだと教育現場側の視点にどうしても偏ってしまいがちなところを、中村さんが産業界や地域社会からの視点をもたらしてくれたため、コンセプトのバランスが良くなったとも思っています。

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5時間くらいを費やした合宿のミッションミーティング

ちなみにその時にディスカッションの末に学生たちが決めた国保ゼミのミッションは、「問題の本質を全力で見つけて解決できる人を育て、輩出する」で、そしてその成果の指標が「卒業時に、やりたい仕事が明確になった人の輩出率」でした。2年経ってみて、これは割と達成されているのではないかと思います。

また、中村さんはこの国保ゼミのフューチャーセンターが地域にとって必要なものであり、地元企業として応援したいからということで、立ち上げ資金を企業として寄附してくださいました。これは本当にありがたく、学生が主に運営を担う国保ゼミのフューチャーセンターの立ち上げと運営という目的において、学生のために使える資金があるというのは助かりました。このお金によって、立ち上げスピードと成功確度が大きく高まったと思っています。

ちなみにその資金を使って最初にやったことは、テーブル作りでした。せっかくいただいたお金ですので何か1つは象徴となるモノに使いたいと考え、ゼミ生が増えたことで手狭になった研究室のテーブルをこの機会に買い替えることにしました。ゼミでもフューチャーセンターでも活動の中心はディスカッションなので、ディスカッションに適したテーブルを皆で選ぼう!ということになり、ゼミ生全員と中村さんとで、地元でセンスのいい家具を扱うクラフトコンサートさんに出かけました。ここにはとても雰囲気がよい部屋があり、フューチャーセンターもこういう雰囲気にしたいよねと話すことでフューチャーセンターの空間イメージを共有しつつ、テーブルの形や大きさを皆で考えました。そして検討の結果、フリッツ・ハンセンのスーパー楕円テーブルがいいねということになりました。楕円なので上座下座ができず、皆でフラットに、程よい距離感でディスカッションできるのがいいというのが理由です。ただ後述しますが、このテーブルに関してはエピソードがあります。

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目指した空間のイメージ

そしてテーブルを決めて数か月後には、次はテーブルに合わせて研究室全体をリフォームしました。活動そのものは学生たちが担っているので、私は環境面での整備を担当しようと、学生たちが使いやすく、学外の方が寛ぎやすく、というあたりを主眼においてレイアウトを考え、これもクラフトコンサートさんにお願いして、自然と会話が生まれるような居心地のいい空間をデザインしてもらいました。なおこのときのイメージにあったのは、ドコモがiモードを開発したときに重要な役割を果たした「クラブ真理」で、多様な人がカジュアルに混ざり合った状態が新結合(イノベーション)に繋がるので、色んな人が集い、出会い、静岡や日本の未来を創るイノベーションが生まれる場になることを目指していろいろ考えました。とはいえ、ハードウェアにお金をかけることには若干のためらいがあったのも事実です。活動がメインなんだから、ハコは何でもいいんじゃないかなあと。でもこのときも中村さんに「経営者が訪れておおっと思うような空間にしたほうがいい」と言われて、そんなものかなあと思った記憶があります。でも結果的に中村さんが正しかったです。リフォームしてから明らかに人の在室頻度があがり、ここに来れば誰かがいるという状態ができました。またステキ空間で過ごすことで、自分たちのやっていることがそれだけ意味のあることだという意識も芽生えるようです。投資効果は十分あったなあと今では思っています。

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昔の研究室の様子。やっぱり違うよね!

さらにハードウェアだけでなくその上で動くソフトの充実も必要だということで、ディスカッションを通じた問題解決ツールを身に着けるために、GE社のご厚意により、合理的意思決定のメソッドであるGE式ワークアウトのセミナーを学生向けに実施していただきました。もともとは企業向けのこのワークアウト、社会経験のない学生相手にどこまで伝わるかなあと当初は危惧していましたが、やってみたら全く問題なかったです。寧ろ社会人では出てこない斬新な意見があったりして、GEの講師の方々にも楽しんでいただけたようです(GEの方も学生向けにやるのは初めてだったそう)。このときに学生たちからは、「1人では限界がある問題解決も、チームや組織になると自分が思いつかないような意見、面白い意見があり、問題解決のためにチームや組織の重要性を改めて感じることが出来た」「今までの自分の思考回路に無駄がたくさんあったことに気付いた」「原因を自分たちに置くことの重要性を学んだ」「ファシリテーションの重要性が分かった」等の感想が出ており、フューチャーセンターにつながる学びとなりました。その他にもいろんな社会人の方に様々な形でご協力いただきつつ、ソフトを充実させていきました。

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GE式ワークアウトのセミナー風景

そんな経緯を経て、2011年9月28日に第1回の「定期フューチャーセンター」を開催。それ以来ほぼ毎週開催しており、この2013年3月4日には第62回目を開催するに至りました。運営は学生が持ち回りで行っていますが、毎回12〜20名程度の学生と社会人の参加者があり、フューチャーセンターが扱うプロジェクトも増えてきています。

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現在のフューチャーセンターの様子


(3)前例のないものをつくるために

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2013年03月14日

フューチャーセンターを立ち上げてみた(1) 立ち上げたきっかけ

組織マネジメントを専門とする静岡県立大学経営情報学部・国保ゼミでは、私が静岡県立大学に赴任した2010年からゼミ1期生と共に「オープンゼミ」という学生企画の地域に開かれたセミナーを不定期に開催して、学生と地域の社会人が共に学ぶ場を開催していました。

これは社会人教育畑出身の私が学部教育に移ったときに感じた、大学生が社会人と接する機会がないという問題意識から始まったものです。大学と地域社会の接点であるオープンゼミは割と好評で、毎回40人程度の参加者を学内外から集めるようになり、学生はもちろん学外の参加者からも「学生の意見が新鮮」「抱えていた課題を違う角度で考えられるようになった」といった声をいただいていました。この規模のセミナーを3人で運営する国保ゼミ1期生の姿を見て、学生を見直したと言ってくださる社会人もおり、このような場は継続していきたいと考えていました。

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2010年のオープンゼミの様子

そんな中で、あるシンポジウムにて長尾彰さんに出会い、「静岡県立大学でフューチャーセンターを立ち上げませんか?」と声をかけられたのがいちばん最初のきっかけです。その時点ではフューチャーセンターのことを聞いたことはあるという程度でしたが、直観的にオープンゼミの延長だと思っていました。で、ゼミ生に尋ねてみたところ面白そうだからやりたいということだったので、じゃあやろうか、と。ただ立ち上げるならオープンゼミ同様、学生主体でやろうと考えました。

まず、そもそもフューチャーセンターって何?ということを理解するために国内外の事例を調べ、富士ゼロックスKDIさんやコクヨさんのフューチャーセンターに視察に行ったりしました。視察には私だけでなく学生にも行ってもらいましたが、学生の主観的な感想は本質的なところをおさえていることが多く、例えば「今回ディスカッションを十分できたとは感じることができなかったという点で不完全燃焼なのですが、その理由を考えてみると、会場が広くてすごくおしゃれな場だったので、ちゃんとした意見じゃないと発言してはいけないような感じがして、雰囲気にのみこまれてしまったこともあげられます。」などという意見は、空間をデザインする際にすごく参考になりました。

またそれと並行して、長尾さんがフューチャーセンター立ち上げに向けて、チームビルディングのワークショップをオープンゼミの枠で4回シリーズで担当してくれました。このオープンゼミは回を重ねるごとに参加人数が増え、フューチャーセンターの下地を作っていきました。

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チームビルディングのオープンゼミ

ただ、そうやって立ち上げに向けて動き出してはいたものの、現状のオープンゼミでも特に不都合を感じていなかったので、わざわざ「フューチャーセンター」と冠する必要性については納得がいっていませんでした。その考え方が変わったのは、3.11がきっかけです。

3月22日の第8回オープンゼミを控えた2011年3月11日に、東日本大震災が発生しました。静岡は幸い大きな被害がありませんでしたが、テレビや新聞で報道される被害の大きさに言葉を失い、刻一刻と明らかになっていく危機的状況を見て、自分や日本の将来への不安が募っていきました。静岡の自分たちが何もできないことでの焦燥感も大きく、そういった周りの状況と学生たちの希望で、3月22日のオープンゼミは当初予定していた「チームビルディング(4回目)」から急遽テーマを変更し、被災地から離れた静岡に住む自分たちに何ができるのかを学生と社会人が一緒に考える機会としました。

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2011年3月22日の様子

そして、そのオープンゼミの中で気づいたのは、社会人は「どうやって元に戻すか」という発想になりなかなか前向きな意見が出にくいのに対し、学生たちは「無いなら無いでしかたない、無いことを所与としてどうすればいいのか」というゼロベース思考で将来を考えるため、ポジティブでクリエイティブな議論になりやすいということ。そして、これから社会に羽ばたいていく若い学生たちは希望の源であり、こういう人達がこれから社会を担ってくれるなら日本は大丈夫だと希望を持てたことから、この希望をもっと広げていきたい、広げなければならないと考えるようになりました。

その手段として、学生たちと一緒にポジティブかつ未来志向で対話する場を定期的に開催し、その場に「フューチャーセンター」というラベルを張ることで場の方向性を明確に打ち出し、人が集まりやすいようにしようと考えたことで、設立を決意するに至ります。

その当時のブログ記事:
震災とフューチャーセンター(2011年04月06日)


(2)立ち上げ前にやったこと

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2012年11月13日

フューチャーセンターの効果

先日、フューチャーセンターを始めて1年がたちました。研究室では、周りの方への感謝を示そうと、ささやかなパーティを行いました

フューチャーセンターの経緯についてはこちらにまとめていますが、ここではフューチャーセンターがもたらした効果や変化について、書きとめておこうと思います。

まず、想定していた効果(最初に持っていた仮説)について。

元をたどると、社会人教育しか経験がなかった私がビジネススクールから学部教育に移る前に、どういう教育が求められているのかを周りにヒアリングしたときに抱いた問題意識が発端です。学部教育に携わる前の企業の人材育成の現場では、「今の若い子はチャレンジをしない、指示したことしかしない、すぐ凹むので叱ることができない」等の話をたくさん聞きました。で、そこにどんな構造的な要因があるのかを各所にヒアリングしたところ、“チャレンジのポジティブなイメージが無い”、つまりチャレンジして失敗して怒られたり笑われたりというマイナスのイメージは出来るのに、成果が出たときの快感や喜びはイメージ出来ない(知らない)んだそうです。そりゃあチャレンジする気にならないね、じゃあポジティブなイメージを持ってもらうにはどうすればいいかな?と考えました。

ちなみに混同されやすい概念ですが、「チャレンジ」と「リスクテイク」は違う。私としては、リスクはできればとらない方がいいけれど、チャレンジする人は増えてほしいと思います。で、そうなると大学というのはまたとない環境だと思うんですよね。失敗が許されるし、学生ということで大目に見てもらえることも多いし、背負っているものも少ない。リスクなんて無いに等しいです。一方で、人は年をとればとるほど背負っているものも増えますから、チャレンジに対する耐性が低くなるし、その結果として頭が固くなっていくことを感じます。なのでチャレンジの結果として成功体験を得られるに越したことはないけど、例え成功しなくても「チャレンジをした」という経験はその後の人生の財産となるから、学生のうちにたくさんチャレンジをしてするといいのではないかな、そのための環境を提供したいなと考えています。

とはいえ、チャレンジは当然ながら必ず成功するわけではありません。というか、成功率100%のものはチャレンジとは言わないので、どちらかといえば失敗する方が多い。なので、成功しなかったときにサポートするシステムというか、転んでもすぐ立ち上がって、もう一度歩きだせるような仕組み(セーフティネット)があることが大事ではないかと考え、私は、これを人のつながりで実現しようと思いました。チャレンジャーやリーダー特有の苦労に共感してくれて、支えてくれる仲間がいるとき、人はけっこう頑張れるということを自分の経験から知っています。1人で悩んでるとすごく辛いし袋小路にハマることが、人と話してみたら意外とあっさり解決したりするので、フューチャーセンターをチャレンジャーのための支援コミュニティとして機能させることで、小さなチャレンジの灯を消さずに済むし、その結果として個人の小さな行動が大きな影響力となることを期待しました。

1年経ってみて、これはわりと実現できているように感じています。その根拠となる指標は、フューチャーセンターに相談ごとを持ち込む人(延べ数だけでなくユニーク人数)が増えてきているからです。最初はただ参加してきた人が、帰るときに「次は相談事を持ち込みたいです」と言ってくれることは少なくないし、実際持ってきてくれます。また、少なからずプロジェクトの継続にも役立っており、フューチャーセンターがなければ途中でしぼんでいたであろうというチャレンジもけっこうあります。

次に、やってみて改めて実感したことについて。

まずイノベーション醸成という視点から。

事業のネタは、最初はとてもとてもささやかなもので、それが創発的なコミュニケーションを経てしっかりとしたアイデアに育っていきますが、その時に大事なのはそのささやかなアイデアを気軽に話せる相手がいることだということを、私はビジネススクール時代に実感しました。ふと思いついたことを話して、共感してもらえる嬉しさとか、自分にとっては大した価値があるように見えないアイデアが意外と評価されたり(もちろん逆もあります)。普通のサラリーマンをやっていた私の日常の中ではなかなかそういう話にならないので、ビジネススクールの同級生の存在がありがたかったです。で、「ささやかなアイデア」を言語化し、周りの知恵を巻き込んでブラッシュアップすることで次のステージにつながります。ですが、この段階で言語化しないと、そのアイデアは日の目を見ずに消えていくか、極めて未熟な段階で留まってしまいます。ですので、イノベーションをシステマティックに生み出すためには、この危うげなフェーズを次につなげるための機能が必要だと考えているのですが、ビジネス相談会のようなかっちりとした場では完全でないアイデアは口にしにくいものです。それがうちのフューチャーセンターだと、「まだちゃんと固まってないけど、ちょっと相談してもいいですか?」という軽い相談がとても多いのです。毎週2〜5個のアジェンダが持ち込まれますし、持ち込まれたアジェンダが実際にイベントになったり、ビジネスプランになったり、経営的意思決定に結びついたりということが起こっています。

これが実現できている要因は、学生の存在が醸すメッセージだと分析しています。まず、ポジティブで活発なディスカッションに必要な、ゼロベース思考と、ヒエラルキーフリーのコミュニケーションは学生の十八番です。加えて、人は搾取する意図がない相手を信頼する傾向がありますので、利害関係を感じさせない学生は信頼関係を構築しやすいのです。

さらに、学生がオーナーシップを持つ場では、人は自分にも相手にも完璧であることを期待しなくなります。普通の人は、学生が完璧な存在であるとは思いません。そんな学生がファシリテーションをしていると、多少そのファシリが危うげでも周りの人が手を差し伸べてくれるというか、皆でなんとかしようぜという雰囲気になります。これが企業フューチャーセンターで、プロのファシリテーターが相手だと参加者がお客さんになってしまうというか、サービスを「与える人」と「受ける人」という構図ができてしまいやすいのですが、うちの場合、そもそも学生に隙のないファシリなんて期待しないから、参加者が場の雰囲気に責任を感じてくれるというか、主体性をもって参加してくれるのです。この場が醸す「完璧でなくてもいい」というメッセージというのは、割と人を安心させるみたいで、「居心地がいい」「発言しやすい」という感想を、本当に本当によくいただきますし、それが先のささやかフェーズを支えています。

次に人材育成機能の視点から。

大学に身を置く身として、昨今の就活システムへの問題意識は強いです。大学生にとっては社会への入り口が就職活動だと思いますが、そのデビュー戦で何十社も面接で落とされたら、人格を否定される気になるだろうし、自分は社会に必要とされていないと感じてしまうと思います。そんな若者に社会や会社のために貢献することを期待するのは無理があると思うんです。なのでこれから社会を支える人材である学生には、「社会は皆に期待している、皆の活躍を心待ちにしている」「社会人ってカッコいいな、いつかあんな社会人になりたいな」という実感を持ちながら社会に出て行ってほしいと日々思っています。かつ、躓いたときは周りの人をうまく頼ってほしい。最近言われる3年以内の離職率は、頼り下手や頼られ下手が増えたことに起因する、という仮説を私は持っています。ちょっと相談したら解決することを相談せずに(相談させてあげられずに)、自分を追いつめてしまうのではないかと。

とはいえ、社会一般としては、学生に対して優しく接してくれる人ばかりではない、というか、優しい人より厳しい人のほうが多いと思います。ですので、最初からそんな荒波に突っ込んで心折れるよりは、最初は学生にやさしいコミュニティで慣らし運転をしてから、外に出ていけばいいのではないかと。そんなときに学生に理解のある社会人の多いフューチャーセンターは最高のデビューの場です。

ところで、この懐の深さは本来社会が備えていたものなんだろうと思います。年配者が苦笑しながらも若輩者を育成する、という機能がもともと社会にはあったと思うし、私もそうやって先輩方に育ててもらったと思っています(だからこそ今後輩を育てる側に回ろうと思うわけですが)。それが社会の変化で余裕がなくなり、こういう長い目で見た人材への投資が行われなくなってきているのだろうと感じています。これまでなんとなくうまくいっていたことが、社会の変化でいつの間にか損なわれて、その結果、近年生まれた穴ぼこなんだという理解です。フューチャーセンターはその穴ぼこを埋めるための手段ですね。

一方で社会人の人材育成という意味でも結構効果があると思っています。要は、若手との付き合い方を学ぶ機会になるんですよね。過去の自分を含め、社会人がなぜ自分より若い人たちを怖がらせてしまうのか、なぜ上から目線コミュニケーションしかできないのか、というのが不思議だったんですが、だんだん、若い世代に慣れていなくて上から目線コミュニケーション以外の方法を知らない(上から目線になっている自覚すらない)のだということもわかってきました。というのも、接触頻度があがると上から目線コミュニケーションが修正され、同じ目線で対話できるようになっていくからです。考えてみれば、この採用抑制の時代に大学生世代と話すことって少ないですよね。学ぶ機会がないなら仕方ない。これももう1つの穴ぼこであり、フューチャーセンターで埋めたいなと思っているものです。

もう1つ、研究者としての私の収穫としては、人の学習プロセスを観察できることです。

特に学生という経験値が圧倒的に不足している人材が学習するプロセスを観察できるので、「経験がない」ということがどういうところに影響が出るのかがよくわかります。自分で経験して、その経験を抽象化(理論化)して、その抽象概念の操作能力を身に着けていく、というプロセスで人は成長するのだなーと感じているんですけど、(この辺は今後ちゃんと勉強したいところ)、経験が少ないと抽象化は難しいものです。今まで1人しか好きになったことがない人が、恋愛論を語ることに無理があるのと一緒です。抽象化があんまりうまくないから、他所の事例から学ぶ力にも限界がある(抽象化というプロセスを経て初めて活かせる情報なので)。大学や大学院の最後に、論文作成という抽象化トレーニングが課されているのって妥当性があるなあと思います。また、経験がない人の学習プロセスを理解したことで、若手人材の育成の場面でどういった教育が効果的なのかをデザインできるようになりつつあります。これも収穫。

とりあえず、今感じているのはこんなところです。以上記録として。

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居心地だけは自慢できるわがフューチャーセンター。






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2012年03月18日

最近のフューチャーセンター

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Photo by Yoshinori Mochizuki

こんな感じで毎週月曜日、18時くらいから静岡県立大学の国保研究室でやってまーす。
参加ご希望の方は国保までお気軽にご連絡ください。



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2011年12月11日

「茶の和ロール」開発秘話

3年生のゼミ活動は、プロジェクトを中心に進めています。目的はリーダーシップ教育なのですけれど、自分がリーダーとして1つのプロジェクトを責任持って動かし、同時に他のゼミ生のプロジェクトをメンバーとして手伝う、というスタイルです。というのも、うちのゼミは組織マネジメントが専門ですが、組織論は「知ってる」と「できる」が極めて遠い知識なので、実際に組織を動かしてみてその難しさを実感してこそ組織理論の価値がわかる、と私は考えているからです。

という理由で、いろんなプロジェクトが我が2221研究室から生み出されているわけですが、その中の1つに「静岡おみや開発プロジェクト」があります。静岡って、いいお土産がないんです。有名なのはうなぎパイだけど、あれは静岡(駿河)というより浜松(遠州)なので静岡の人間にとっては微妙だし、地元ではそこそこ有名な「こっこ」も県外じゃまったく知られてない。友人や仕事の打ち合わせ相手に持っていく手土産には、毎回本当に悩まされます。そこでI田ちゃんは、静岡に誇りを持ってもらえるような「静岡らしい」お土産を開発する、というプロジェクトを立ち上げました。しかも、同じ大学にある食品栄養科学部の学生も巻き込んで、学部間コラボレーションで。ちょうど静岡市の産学交流センターが地元の中小企業さん向けに「静岡おみや」という商品開発の支援事業をやっており、その事業にオブザーバー参加をさせてもらったことでプロジェクトの流れができ、静岡駅前で消費者へのアンケート調査を実施したり、他の競合お土産を分析したり、バイヤーさんにヒアリングに行ったり、それらの結果を持ち込んでフューチャーセンターで皆の意見を聞いたりという活動を行ってきまして、最終的に茶畑に見立てたロールケーキというコンセプトにたどり着きました。

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食品栄養科学部×経営情報学部の学生コラボレーションです。

まあ、ここまでは普通に学生ができることかなあという気もしますが、I田ちゃんの強運さはここから。ひょんなことで知り合った地元のお菓子メーカーA社の社長さんが、I田ちゃんの企画を気に入って下さり、協力を申し出てくれたのです。「静岡おみや」事業では、参画企業のテストマーケティングの場として静岡の産業フェアに出品するというプロセスが組み込まれていたのですが、この産業フェアにI田の商品も出品させていただけることとなり、その試食用商品をA社に作っていただくことになりました。しかもA社はすばらしいことに、「学生さんは現場を見たほうがいいから」と、製造工程に学生を参加させて下さったのです。これは本当にありがたい提案でした。私も現場経験を大事にする派なのですが、現場に素人が入ることは邪魔になることも多いので、こちらから言い出しにくいんです。しかしこのA社の社長さんは、お願いせずとも機会を学生に提供してくださいました。ありがたやー。自分が考えた企画が形になるのも貴重な経験だけど、さらに企画のから最後の製造工程まで一貫して体験出来るなんてなかなかないですよねえ。

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企業さんに企画を説明するI田ちゃん。

I田ちゃんは、毎回の打ち合わせでたたき台となる案を1つではなく何十個も持っていきます。社長さんにいただいた、この商品開発の先に目指すものは何か?というお題に対しても、たくさんのフレーズを考えてきました。この中で絞り込み、その結果、「静岡を誇りに思ってもらうための商品」「人と人のつながりを生み出すきっかけとなる商品」という根っこのコンセプトが生み出されました。I田ちゃんは周りを巻き込んでいくのが巧いなあと感じるけど、こうやって言われたことをちゃんとやる、提案も1,2個ではなく何十個単位で持ってくる、というあたりが周りに支持してもらえる理由のような気がします。もちろん自分の案だけでなく、他のゼミ生の力をうまく借りてこそではありますが、これだけ考えてきているからこそ、企業さんも本気になってくださると思うんですよね。ここまで自分でやっているならあと少し、こちらも力を貸しましょうか、と思っていただけるんだろうなあ。

で、企画に関する打ち合わせを経て、実際に商品の試作に。通常業務後の社員さんと厨房をお借りして(業務外業務ありがとうございます)、製作しました。

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この日の作業工程に「県大ロール」という記載が!!

掛川の緑茶を使ったロール生地にクリームとフィリングを巻き込む。私も時々お菓子を作りますけど、クリームを均質に塗ったり、ロールケーキを巻きこんだりって意外と難しいですよね・・・。

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プロのパティシェさんに教えてもらいながら。

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自分たちで作っている分、出来あがったときの気分は格別。

試食して、甘さやフィリングとのバランス、クリームの量なんかを検討しました。そこで量産用のレシピを決め、また別日の業務外時間の厨房をお借りして、学生4人で600人分の試食を用意。お疲れさまでした!

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チーム「茶の和ロール」

そして迎えた産業フェア。当日は、人目を引くために静岡の茶娘衣装で挑みました。女子大生4人が茶娘コスプレしている姿は目立つので、静岡おみやプロジェクトの宣伝をしたり、他の参加企業さんのところのヘルプに入ったりもして、これまでお世話になっている分の恩返しも意識しました。フェアの前々日に、静岡新聞に取り上げていただいたため、新聞を見て来たという方も少なくなく、試食が600人分では全く足りず、急遽1切れをさらにカットして2,000人ほどの試食を用意し、大勢の来場者にのまれたりしつつも、皆で頑張って466人分のアンケートを集めました。静県大の人もたくさん来てくれました。感謝ー。

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リーダーI田もブログで当日の模様をレポートしています。
茶の和ロール@産業フェアしずおか

さてさて、産業フェアはゴールではなくスタートです。まずはアンケートで得た消費者の声を集計し、反映しながら、商品企画をブラッシュアップさせていきますよー!

※「茶の和ロール」にご興味がある方は、お気軽にご連絡くださいませ。


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2011年10月29日

定期フューチャーセンターのご報告

さて、この月曜日は、第3回の定期フューチャーセンターを開催しました。

第1回はGE流ワークアウトで問題解決策を皆で考えました

第2回はI田ちゃんの商品開発の相談が、フューチャーセンター参加者の知り合いのバイヤーさんにヒアリングに行く話に発展しました。I田ちゃんは後日そのヒアリングに行きまして、作る側ではなかなか気付かない、買う側の視点からの色々な指摘をしていただいたようです。何かものを作るとき、作り手の一方的なイメージを実現して消費者に受け入れられるということはまずないので、根幹となる信念は持ちつつも、開発段階でどれほど市場の声を聞く機会を設けて反映していくかが重要だと思います。そのため、こういったその場に集う人のネットワークを活かしてヒアリングの機会を持てるというのはとてもラッキーなことだと思うし、フューチャーセンターのあるべき姿の1つだなと思います。

さて、第3回は、そのヒアリングの機会を学生たちが提供する場となりました。大学の産学連携室の方が、商品に対する学生の意見を聞きたいという要望を持つ地元の企業さんがいるんだけど、という相談を私に持ってきたので、それじゃ一度フューチャーセンターに来ていただいて、ざっくばらんな意見交換会をしましょう、ということに。

そして当日。岡部からいらっしゃったH社長に、まずは商品のデモを見せてもらいます。手前にある紙カップがその商品。
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予めいただいた資料では、何がアピールポイントなのかいまいち分からなかったのですが、急須を使わずにお茶が飲めるという商品でした。これ便利!!そしてお茶も美味しい。
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学生たちの忌憚ない(本当にストレート)意見を真剣にメモるH社長。
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個人的には、パッケージに工夫の余地あり(ターゲット顧客とデザインの方向性がずれてる)だと思ったので、研究室にあった紙カップを使って商品を作ってみました。これを何人かに配り、意見をもらうことに。
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うーん、次の展開にぜひ繋がってほしい。というのも、静岡に赴任して以来、静岡のお茶の美味しさを友達に知ってもらいたいなあと思っているのですが、静岡ではお茶が「茶葉」でしか売ってないんですね。でも東京のおうちやオフィスに急須は無いし、下手したら給湯室すらないところも。そんな人たちに茶葉を渡しても迷惑なんですよね〜。なのでいつも個包装のティーバックを探して渡していたのですが、ティーバックを出している緑茶メーカーは私の知る限りは2つです。そこに事業機会を感じていた私としては、この商品には潜在的な市場があることを感じました。なのでこれは量産されてほしいのですよ。


この日は他に、静岡大学の学生Uくんも来ており、相談事を持ちこみました。まちづくりに関する案件について皆で意見交換会。
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たまたまお誕生日だったそうで、I田ちゃんの試作品のケーキでお祝い。
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ところで、H社長にも、Uくんにも、「県大にはこういう場があって羨ましい」と言われました。ある人が、何かを思いついて一歩を踏み出そうとしているとき、カジュアルに相談が出来る場があるかどうか、また、その相談の場にいる人たちが、「何バカなこと言ってんの」「そんなのムリだよ」と一言目に言う人たちなのか、「面白い!」「こうしたらもっと良くなるよ」と一言目に言う人たちなのか。この2点によって、その人の次のステップは大きく変わってきます。そして、ふと思いついた突飛なアイデアを気軽に相談できる場所があり、かつその場には背中を押すタイプの人が揃っているとき、そのアイデアが形になる可能性が生まれると私は考えているのですが、そういうのがフューチャーセンターの機能の1つなのかなと思うわけです。そしてそれが、2221研究室では実現できるということがこの日確認出来まして、嬉しい限りです。集まってくれる学生たちのおかげです。


このフューチャーセンターは毎週月曜日、18:30〜22:30くらいの時間で開催しています。どんな話になるかは、その日の顔ぶれ次第です。話したいことがある人、相談したいことがある人、相談に乗りたい人はどうぞお気軽にお越しください。不思議ですけど、毎回なんだかんだと議題が集まります。

今後は、こちらの研究室ブログにも開催予定を載せていきます。
国保研究室


ところで、I田ちゃんに触発されて、私も久しぶりにお菓子づくりなどやってみる。実家にいた頃は、よくお菓子を作ってたんですよねー。食べてくれる人がいないと作らないタイプなので、今のように人がワイワイいるときは作りがいがあります。発色のいい静岡の抹茶を使って、いろいろと試してみているところです。
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2011年10月22日

第2回FCのレポートと、次回以降のご案内

10月17日(月)に2回目の定期フューチャーセンターを開催しました。

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この日は、学外からN村さんとS澤さんがお越しくださいました。学内からは入れ替わり立ち替わり、という感じで学生が来てくれました。バイトまでの時間を過ごすとか、サークルの会議が終わってから顔を出すとか、こういう感じで、自分の都合がつくところで顔を出し、行くと誰かが居て話が始まる、という運営は私的には理想です。

さて、この日のトピックは、まず、引き続きおみやげ商品開発中のI田ちゃんの試作品を試食&意見交換会を。
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試食した人からフィードバックを集めるだけでなく、S澤さんがお知り合いに商品バイヤーがいるということで、今度お話を聞かせてもらいにいく話がまとまったりと、緩いネットワークの効果が見られました。

その他、私が島根出張で買ってきた新米をS矢くんが鍋炊きしておにぎりにしてくれたので、井川で買ったお漬物と一緒に皆で食べました。S矢くんの米炊きスキルは相当なもので、特技として履歴書にも書けるレベル。米自体が美味しかったのもあって、非常に豊かな食卓でした。

この日扱われたアジェンダはいくつかあったのですが、そのうちの1つとして、SNSでのイメージ向上施策がありました。静岡県立大学経営情報学部では、mixiはもちろんのこと、twitterやfacebookをやっている学生も多いです。が、これらのSNSのアイコンで実際の顔写真を使っている人は少なく、また使っていてもあまりいい写真でないことが多いです。でも、アイコンはその人のイメージを決める非常に重要なマーケティングツールであるだけでなく、人の集団のイメージは組織のイメージにも繋がります。だいたい顔写真使っていない人には、信頼感を持てないし。そこで、S矢くんのアイコンがS之上さんにダメ出しされた話をきっかけに、アイコン写真のダメ出し祭が始まり(笑)、研究室で撮影会が始まり(研究室のライティングを替えたら、私の腕でもずいぶんキレイな写真が撮れるようになりました♪)、いい写真をお互いに選び、何人かの学生がアイコン写真を変更するに至りました。これは個人のイメージアップになっただけでなく、当学部には素敵な学生が多いアピールにもなるよ!!あと、こんなカッコイイ写真を使ってたら、ダークなことや無責任なことはつぶやけないでしょうから、本人のメンタル面でも変化があるはず。周りからの視線を意識して振る舞うことは、リーダーとして大事なことでもありますから、ちょうどいいよね。というわけで、ご希望あればいつでも写真撮りますよー♪

といいつつ、この日のフューチャーセンター、最初の2時間くらいは私は東京とSkype会議をやってました・・・。同じ空間には居るはするものの、私抜きでパーティションのあちら側で勝手に進行していくフューチャーセンター。いいよね〜。これぞ学生が運営するフューチャーセンターではないですか。というわけで、こりゃ私居なくても大丈夫だと判断できましたし、学生たちにも「別に先生はいなくてもいい」と言われていますので(笑)、定期フューチャーセンターは毎週開催にすることにします。

毎週月曜日、18:30頃から、一般教育棟2221でやってます。私はだいたい居るけど、居ない日もありますので、どうぞ勝手に遊んでいってください。10月は、24日と31日です。次回の24日は地域の経営者さんがある試作品が持ってこられるそうで、それに関する学生の意見を聞きたいそうです。協力よろしくです。(あ、あと静岡新聞の取材が入るかも)







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2011年10月15日

次回フューチャーセンターは10月17日(月)です。

次回のフューチャーセンターは10月17日(月)の18:30〜です。22時くらいまではやっていますので、この時間枠の都合の付く時間にどうぞ。場所は静岡県立大学の一般教育棟2階2221研究室です。
キャンパスマップ

誰かに相談したいことがある人は、どうぞお気軽にお越しください。
ご参考までに、前回の模様はこちらに紹介しています。

私のほうで軽く食べられるものを用意しますが、差し入れも大歓迎です。


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2011年10月11日

GE式ワークアウト研修と、FCでの実践(後編)

さて、この9月に研究室をリフォームしまして、よりクリエイティブなミーティングが行いやすい空間を創りました。これまでの部屋は、広くはあるけれど暗くて殺風景な雰囲気だったので、なんとなく行きたくなってしまう、足を踏み入れるとわくわくしてしまうような部屋にしたかったのです。地元静岡のいい建築家さんとのご縁もあり、大学が夏休みの間に工事を敢行しました。大学の施設室には「現状復帰するならいいですよ」と言われているので、現状復帰が出来る範囲で好きにやらせてもらいました。

この改装の目的は、当研究室をフューチャーセンターとして機能しやすくすることです。もともとリーダーシップ教育を意識してゼミ活動を行ってきましたが、3月11日の震災をきっかけにきちんとしくみ化しておきたいと考え、地元の経営者さんのご支援もあり、5月30に学生たちが設立宣言をしたフューチャーセンター。活動そのものは学生たちが担っていますが、私は環境面での整備で貢献するべく、学生たちが使いやすく、学外の方が寛ぎやすく、というあたりを主眼においてレイアウトを考えました。イメージにあったのは、ドコモがiモードを開発したときに重要な役割を果たした「クラブ真理」。流石に贅沢さは全然違いますが、多様な人がカジュアルに混ざり合った状態が新結合(イノベーション)に繋がるので、色んな人が集い、出会い、静岡や日本の未来を創るイノベーションが生まれる場になることを願って創りました。なんたって、うちは経営情報イノベーション研究科なのですから。

象徴となる楕円のテーブルはゼミ生が型取りしました。だからちょっと歪んでるw。
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フューチャーセンターについては、こちらを参考に。
フューチャーセンター - Wikipedia
フューチャーセンター・ウィーク2011最終報告書

さてさて、場が出来たって活動が無けりゃ意味がない!というわけで、定期的にフューチャーセンターの開催をすることにしました。頻度とかスタイルとかはまだ流動的ですが、とりあえずやってみて、やりながらどんどん改善を加えていくのが私のポリシーです。

第1回の定期FCは10月3日に開催しました。当日はゼミ生以外にも2年生が2人、県大の職員さんと他学部の教員の方が来てくれました。ファシリテーターを立てなかったので、前半は何となく雑談っぽくなりましたが、K村ちゃんがあるまちづくりワークショップへの参加を迷っていたので、皆で背中を押しまくる。地域づくりという観点で、学生が出来ることってすんごい多いよ!そのあたり、今度の山崎さんのランチョンセミナーで語ってもらおうと考えていますが、しがらみがなく新鮮な眼でまちを見られる学生は、いいコネクターになるよー。
10月20日 コミュニティデザイナー 山崎亮氏 セミナー
「コミュニティ・デザイン 〜人と人の繋がりで生まれる価値〜」


その他、現在食品栄養科学部の学生と一緒に、静岡のお土産商品を企画しているI田ちゃんのプレゼンを聞いて意見交換。たくさんの脳みそで話すと、たくさんのアイデアが出ることを実感しました。

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ここまではブレインストーミングの要素が強かったのですが、この日はS木くんが具体的な相談内容を持ちこみました。自分のプロジェクトの方向性に迷うS木くん。早速、先日学んだGE式ワークアウトを使って、問題解決を試みることに。
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ポストイットを使って問題点の洗い出し!
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ホワイトボードにポストイットを貼って課題を可視化。
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課題をカテゴリー分けして、
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顧客満足度へのインパクトと実行の難易度で整理。
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5回のWhy?で原因を深掘りして、特性で分けて
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S木くんの具体的なアクションプランに落とす、という一連のワークアウトを学生たちがやりました〜。
私は見てただけ。

面白いことに、社会人教育をやっていると思考が凝り固まってるな〜と感じることが少なくないのですが、学生たちは本質的な問題に切り込むのに躊躇わないし、最初から枠にはめて考えたりしないから、私(社会人)では想定していなかった発想をしてくれることがあります。ゼロベース思考と、ヒエラルキーフリーのコミュニケーションの賜物ですが、この2つは学生の強みだと思いますし、私が大学でフューチャーセンターをやろうと考えた理由です。

それにしても学んだことをさっそく実行する、というのは素晴らしい姿勢だと思うし、教えがいもあるってもんです。当のS木くんが、部屋に入ってきたときはどうしていいか分からなくなっていたのに、やるべきことがクリアになったことですっきりした気持ちで部屋を出ていけるというのもイイ!チームの力ってすごいなあ、と改めて思いました。1人で悩んでると辛いし袋小路にハマるけど、人と話してみたら意外とあっさり解決したりするもんね。


さてさて、次回のフューチャーセンターは10月17日(月)の18:30〜です。22時くらいまではやっていますので、遅れてでも歓迎です。誰かに相談したいことがある人は、どうぞお気軽にお越しください。私のほうで軽く食べられるものを用意しますが、差し入れも大歓迎です。





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2011年10月08日

GE式ワークアウト研修と、FCでの実践(前編)

先日、とあるご縁をいただいて、GEさんの「ワークアウト」の研修を学生向けに開催していただきました。フューチャーセンターで使えるように、というN村社長からもお申し出だったのですが、学生のうちにこんな研修を受けられるなんて、ほんと贅沢だと思います。うらやまー。

GE式ワークアウトに関しては、ここの説明が分かりやすいです。
企業研究レポート | 企業研究レポート --GE編--04
要は、問題解決のための考え方というか、具体的な手法ですね。

さて、研修当日。学生は2チームに分かれ、ある問題山積なコーヒーショップの改善案を考えるというシナリオです。
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まずは、問題点をポストイットにどんどん挙げていく。
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周りの人と相談せず、自分1人で制限時間の中で片っぱしから考えていくという手法は、他人の意見に引きずられないようにするためだそうですが、確かにこの方法だと上がってくる問題点の数が飛躍的に多くなりましたし、意外な意見も出やすくて、感心しました。グループで行う意思決定の弊害の1つに「同調」がありますが、個人間コミュニケーションを制限することで同調を防ぐ名目集団法の効果を目の当たりにしましたねえ。確かにもっともらしい意見が出ると、こんなつまんない意見言わなくていいかな・・・と思ってしまうけど、面白い発想はそういうところにあったりするしね。

そして皆の意見を持ちよって、
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ファシリテーターのリードで問題をカテゴリ分けして整理して、
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優先順位をつけて、原因を考えて、
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特性で分けて対策を考えて、
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行動計画をスポンサーに説明して、
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・・・という一連のワークアウトを経験しました。(上記のプロセスはざっくりです)

もともとは企業向けのこのワークアウト、社会経験のない学生相手にどこまで伝わるかなあと当初は危惧していましたが、やってみたら全く問題なかったです。寧ろ社会人では出てこない斬新な意見があったりして(e.g.チーム感を醸成するためにハイタッチする、とか)、大変面白かったし、GEの講師の方々にも楽しんでいただけたようです。私としても、ばんばん手が上がったり、自分の意見やグループの発表を堂々と学生が話しているのを見ているのはとても嬉しいです。(自分も講師をやることが多いので分かるのですが、反応が無いというのが一番辛いので)

学生たちからは、「1人では限界がある問題解決も、チームや組織になると自分が思いつかないような意見、面白い意見があり、問題解決のためにチームや組織の重要性を改めて感じることが出来た」「今までの自分の思考回路に無駄がたくさんあったことに気付いた」「原因を自分たちに置くことの重要性を学んだ」「ファシリテーションの重要性が分かった」等の感想が出ており、いい経験になったんだなーと感じました。

また、これはGEさんにもお褒めいただいたのですが、今回の感想を読んでいると学んだことをすぐに自分のプロジェクトや活動に落とし込んでいこうとする姿勢が見てとれ、素晴らしいなあと思いました。研修を受けるだけ受けて、普段の行動には全く変化が見られないという社会人が多い中、この素直さと行動力はほんとすごいと思う。変なプライドや頭でっかちが学びを妨げると思いますし、実際、行動する人はどんどん伸びて行きますから。ぶっちゃけ、学部教育に携わる前は学生なんて大したことは出来ないだろうと考えていたんですけど、この1年半の静岡生活では、いい意味で裏切られっぱなしです。ゆとり世代だろうがなんだろうが、こんな学生たちが創っていく未来が悪いものであるわけがない、と思う。

さて、この日学んだワークアウト、さっそく後日のフューチャーセンターで活かしました。その模様を次のエントリーに書きます。


ドア越しの眺めが好き。未来を覗いている感じがする。
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GE式ワークアウト [単行本] / デーブ・ウルリヒ, スティーブ・カー, ロン・アシュケナス (著); 高橋 透, 伊藤 武志 (翻訳); 日経BP社 (刊)
「GE式ワークアウト」
デーブ・ウルリヒ, スティーブ・カー, ロン・アシュケナス (著)
日経BP社

posted by Kokubo at 13:07| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 地域と大学(フューチャーセンター) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月29日

定期フューチャーセンター、始めます。

3月11日の震災をきっかけに、希望に満ちた将来を社会にもたらすリーダーを育てることを目的として、

5月30日に設立したフューチャーセンターですが、

その後、夏休み前のプロジェクト決意表明会&メンバー1名の留学壮行会を行い

大学の長い夏休みを経て、このたび9月28日に再開しました。
夏休み期間中に研究室の内装をリフォームし、より寛いだ雰囲気でディスカッションが出来るようにしました。

ようやく場所の準備が整いましたし、学生たちのプロジェクトも軌道に乗ってきているので、これからはもっとオープンに活動していきたいと思います。学生たちが運営するオープンゼミも開催する予定ですが、こちらは月に1回くらいの頻度かつイベント色が強いので、もう少し少人数でゆっくりディスカッションをするために、毎週月曜の18:30〜21:30で「フューチャーセンター」として研究室を開放したいと思います。参加対象は、皆に相談したいことがある、あるいは相談したいことがある人に貢献する意欲があるチャレンジャー。そして持ち物は、ポジティブ&クリエイティブな脳みそです。出来ない理由ではなく、出来る理由を考えるために脳みそを使いたい人、WELCOMEです!

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こういう空気の中で、ディスカッション出来ますよー。

私は今学期は毎週月曜16:20〜17:50でベンチャービジネス論という授業を担当していますので、その後ですね。ベンチャービジネス論でゲストをお招きした際には、こちらにも寄っていただこうと思います。(余談ですが、毎週金曜日13:00〜14:30は慶應SFCで「社会起業論」を教えています。こちらもご興味あればどぞー)

試行錯誤しながらですけど、とりあえず10月は3日、17日、24日で開催します。
よろしければどうぞお越しください。場所は、静岡県立大学一般教育棟2階2221研究室です。



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こういう表情の人を社会に増やしたいのです!!






posted by Kokubo at 21:05| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 地域と大学(フューチャーセンター) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年08月14日

静岡エクスカーション

先日、友人が静岡に遊びにきたのでいろいろとご案内。
私も赴任するまでは全く知らなかったのですが、意外と色々な魅力に溢れていますので、ブログ上でも少しご紹介したいと思います。


まず久能山東照宮
徳川家康は将軍職を退いてからは、静岡は駿府城に住んでました。そのおかげで城下町の静岡は繁栄し、今でもその名残を随所に見ることが出来ます。例えば、静岡では「葵」という名称やモチーフを随所に見ますし、駿府城跡地周辺には、「茶町」「鷹匠」「呉服町」「両替町」のように、機能を表した地名が多いです。ここ駿府で晩年を過ごした家康は、元和2年(1616年)の没後は遺命によりこの久能山の地に埋葬されています。自分が守り神となることで、西の敵から江戸幕府を守ろうとしたのだと言われています。その後三代将軍家光によって日光東照宮が造営され、御霊の一部が移されています。東照宮といえば日光しか知らなかったのですが、オリジナルは静岡だったんですねえ。なおGoogle Map上で見ると、この久能山と日光を結ぶ直線上に富士山があることが分かりますが、これはおそらく偶然ではなく、何らかの意図があったと思われます。

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さて、この久能山東照宮は車で直接いくことは出来ず、駿河湾側からの表参道として1,159段の石段と、ロープウェーと2つのルートがあります。私はへたれなので石段を使ったことがないのですが、地元の方は新年の初詣で登ったり、ここで働く神主さんたちはこの石段で出勤しているらしく、すごいな〜と思います。

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駿河湾と久能街道の石垣イチゴが見降ろせます。

家康の遺骸が埋葬されているという神廟は割と地味なのですが、権現造の本殿、石の間、拝殿は2010年12月に国宝に指定されました。

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色遣いが日本じゃないみたい。

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こんなところにも葵の御紋が。

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門から見降ろす風景がけっこう好き。


次に、(財)静岡県舞台芸術センター(Shizuoka Performing Arts Center、通称SPAC)へ。SPACは、専用の劇場や稽古場を持ち、専属の俳優、専門技術スタッフが活動を行なう日本で初めての「公立の文化事業集団」なんだそうです。舞台芸術のビジネスモデルをがらりと変える試みですね。舞台芸術には疎いわたくしですが、ここは建物が素晴らしいんです。

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茶畑に映えるグレーの建物。静岡っぽい!

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案内板もいちいちカワイイ。

このSPAC、写真以外にもいくつか建物があり、どれもすごーくカワイイものでした。ところどころに茶畑があるのが、静岡らしくていいかんじ。が、普段は一般公開していないのが残念。いい観光名所になるんじゃないかと思うんですけどね。


そして由比漁港・浜のかきあげやでゴハン!

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かき揚げうどん700円。かきあげ丼も美味しいです。

静岡と言えば桜エビ。今は桜エビのシーズンではありませんが、生を冷凍保存しているので桜エビ含有率の高い美味しいかき揚げが年中食べられます。桜エビは漁が解禁されるのが年に4カ月くらいだけなんですが、それでも十分の稼ぎがあるとか。なお漁業権は世襲制、成果は皆でプールして均等割りするシステムを取っているそうです。


その後は清水漁港にある「河岸の市」にふらふらと行ってみたり。

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程よいサイズの市場で、美味しい海鮮丼が食べたり、新鮮な魚を購入したり。


その他のオススメスポットとして、

D&DEPARTMENT PROJECT SHIZUOKAのカフェで静岡の丘陵を見ながらお茶する
・茶町にある製茶工場併設のショップ&カフェ茶町KINZABUROでお茶を買ったり「茶っふる」を食べる
・静岡発祥で東京にも店舗を展開しているヴィノスやまざき静岡本店で静岡地酒を購入する
・静岡発祥のキルフェボンの一号店でケーキとお茶する


等があります。
静岡、楽しいですよー。どうぞお越しください。


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2011年08月12日

フューチャーセンターその後

その後、フューチャーセンターとしての活動はぼちぼちやっています。

もう少ししたらもっとオープンに活動していきたいと思っていますが、学生たちの初動の部分は特に丁寧にやる必要があるので、これまではセミクローズドでした。でも、それは単にある程度無菌状態で意思決定させたかっただけで、あえて隠しているわけではないので少しご報告を。

現時点では、ゼミ生たちが中心にフューチャーセンターを動かしていますので、フューチャーセンター活動はゼミ活動と密接に関係しています。色んなフューチャーセンターの定義がありますが、ウチはとりあえず、学生たちがゼミの一貫として手掛けるプロジェクトを進めていくうえでの進捗報告と、その過程で必ずぶち当たる困難を相談する場として捉えています。


で、前期最後となる7月29日のゼミは、3年生による今年手掛けるプロジェクトの決意表明会でした。
各自、自分のプロジェクトの構想を発表。

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自分以外のプロジェクトにコメントするもの大事な貢献。この日は3名の社会人の方が遊びに来て下さいました。いつもお世話になっている地元の経営者N村さん、六本木の富士ゼロックスのフューチャーセンターでお仕事をされているA井さん、東京時代の友人でネットワークの広いI石さん。オトナの皆さんからも厳しいコメントや励ましの言葉がとんでいました。でもA井さんとI石さんが申し合わせたように、「悔しいって思う気持ちが成長に繋がるんだよね。若いうちからそんな経験が出来て羨ましいなあ」とそれぞれ帰り途で話していたことが面白かったですね。

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ゲストも一緒に、そのまま研究室で打ち上げ。

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この日は、今年から留学する4年生のW辺さんの壮行会と、S矢くんのお誕生日祝いも兼ねました。いろいろサプライズ企画を準備したM野ちゃん、おつかれさまー。

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大学はこれから夏休みに入るため、ゼミとしての正式な活動はいったんお休み。
どうぞいい夏休みを。






posted by Kokubo at 19:16| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 地域と大学(フューチャーセンター) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする