2015年06月14日

育休プチMBA勉強会が「始まった理由」と「続けている2つの理由」

最近メディア取材が増えており、勉強会の起源を訊かれることが多いのですが、実はこの勉強会、「始まった理由」と「続けている理由」が別なんですよね。なのでそこをちょっとまとめておこうと思います。

勉強会が始まった理由

育休プチMBA勉強会は、NPO法人マドレボニータが提供する産後女性向けエクササイズ教室の「にんぷクラス」(吉祥寺)で第2子妊娠中だった岡野美佳さんと第1子妊娠中だった私がであったことがきっかけです。はじめての妊娠でいろいろ不安が多かった私は、クラス後に経産婦である美佳さんからお茶に誘われてとても嬉しかったことを覚えています。マドレさんが提唱している「産褥ヘルプ」を実践してみようと、4月に出産した私のところに美佳さんとマドレの事務局を務めている太田智子さんがおかずをもって遊びにきてくれました(余談ですがその時に持ってきてもらったセロリ入りきりぼし大根がとてもおいしくて真似するようになり、今ではムスメの大好物になっています)。はじめての新生児子育てでわからないことが多かった私は、ここぞとばかりに先輩ママのお二人に質問させてもらいました。

で、そこでご飯を食べながら雑談していたときに、私が仕事でマネジメント研修を提供していることを知った美佳さんが発した「前から経営を勉強したいと思っていたんですけど、どこでどう勉強するのが良いですかね?」という質問が、私には1つの大きな転機となりました。というのも、普段から企業や行政機関に経営能力開発プログラムを提供する仕事をしていますが、そういった場で女性を見かけることは非常に少ないですし、いてもほとんど発言しなかったりします。なので、そういう学習意欲がある女性がいること自体が新鮮でした。また、実践的なマネジメントを学びたいのであれば、ケースメソッドを使ったディスカッション授業にするのが一番効果的だと私は思っていますが、同じ授業を女性相手にやったときにいったいどんなディスカッションになるのか、男性とどう違うのかを知りたいと思いました。あと、私は出産後は仕事のパフォーマンスもモチベーションも落ちてしまうのだろうと考えていたのですが、美佳さんは「第一子出産後のほうが営業成績が良くなった」と話しており、その現象がとても興味深かったのです。

で、美佳さんが人集めと場所提供を担当してくれるなら、私がプログラムと教材を用意しますという話になり、5月に出産した美佳さんの体調が回復するのを待って、7月に第1回を開催しました。ディスカッション授業は人がいないと成り立たないので、こういう学習機会に興味を持つ育休中の女性がどれくらいいるのかは未知数でしたが、敏腕営業のみかさんはちゃんと人集めをしてくれました。それで、2週間に1度ほど美佳さんちのマンションに集まってディスカッションするという勉強会が始まりました。これが勉強会が「始まった」理由。

勉強会を続けている2つの理由

で、勉強会をやってみたら面白い人にたくさん会えたし、企業目線からみたら想定外の思考回路をするということも分かり、企業と女性社員のミスコミュニケーションってこういう構造になっていたんだーなるほどーと気づかされることがたくさんありました。また、勉強会のプログラム開発のために子育て女性を取り巻く職場環境を調べたのですが、その結果分かってきたことは、女性が仕事と子育てを両立しにくいという問題は、女性の能力以上に、企業の構造上の問題、つまり経営課題であるということでした。たとえば子育てと仕事の両立を阻む最大の課題は長時間労働なのですが、その裏には残業をよしとする文化だったり、生産性の低い業務オペレーションだったり、コミュニケーション機能不全の組織だったりがあるわけです。その一方で女性は意外なことに出産後のほうが実は就労意欲が高いというデータがありましたし、実際に勉強会に集まる人をみていてもそれは実感できました。みんな子どもがいても仕事はしたいと思っている、にもかかわらず職場環境のせいでその貢献意欲が発揮されていない、そしてそういう意図しないぶらさがり人材の存在が組織全体のモチベーションを下げている、という構造が明らかになりました。そしてこれは企業側に悪気があるわけではなく、優秀な女性には結婚出産を経ても長く勤めて欲しい、出産後もぶら下がらずに戦力になってほしいと考えているにも関わらず、制約を抱えた人材をどうマネジメントすれば活用できるのかその具体的な方法が分からなくて困っているということも分かってきました。

であれば、この問題は制約人材側の能力開発(特に思考の転換)と、管理職のマネジメントスキル開発(制約人材を活用するスキル)、そして残業文化の変革(含む業務改善)で解決できるなという結論に至りまして、そして、これは私の専門知識で解決策を提示できる領域だということに気づきました。で、経営学の専門家であり母親という自分の立ち位置を活かして、この女性の両立問題から透けて見える経営課題の解決を研究テーマにしようと決めました。これは、専門家としての職業上の「続けている」理由。

もう1つは個人的な理由です。仕事柄、20代の女性と話をする機会が多いのですが、その多くの人が「子どもは欲しい。でも仕事と両立できるとは思えない」と考えていることが分かりました。私から見たら十分優秀な女子たちが、「私は両立できるとは思えないから、こどもか仕事かを選ばなくてはならない」と思ってるんですよね。どうしてもキャリア構築期と出産適齢期が重なってしまう女性にとって、出産とはすなわち「仕事経験を積むチャンス」を逃すということに等しいです。メディアに出ているキラキラワーキングマザーは実母のフルバックアップが透けて見えるので真似できる気がしない一方で、ごく身近で子育てしながら仕事をしている人はいわゆる「ぶら下がり」状態になっているのを見るわけです。その状況では、「普通の人間である自分に、仕事と子育ての両立は無理」と考えてしまうのはごく当たり前ですよね。つまり、こどもが欲しくないわけじゃないけど、「子どもかキャリアか」を選べなくて出産を先延ばしにしてしまう人が少なくないと感じています。だから、こどもとキャリアは二者択一ではない、こどももキャリアもどっちもとれるということが分かったら、もっと気軽に出産に踏み切る人が増えるだろうとずっと思っていました。

なので、この勉強会によって育児期間を能力開発期間に変えられるということ、キャリアと育児を両立しているスーパーじゃないウーマンがたくさんいることを多くの人に知ってもらえれば、キャリアを諦める覚悟をせずとも子どもを持てるんだと考えられるようになれるかなと思ったんですよね。つまり「こどもを持つ=キャリアを諦める」という方程式を崩したいのです。周りの人へのヒアリングや、仕事で触れるデータたちをみても、女性たちは「こどもが欲しくない」とは思っていません。でも「育てる自信がない」とは思っています。であれば、彼女たちに育てる自信を持たせることが大事ではないでしょうか。こどもが欲しくないという意思は尊重する必要があるし、産みたくても産めない人には配慮をすべきです。でも子どもが欲しいという意思があるし、産むことも出来るけど、育てる自信がないという人に対しては、この勉強会が解決策になるんじゃないかと思ったんですね。つまり私は、少子化対策には子育て支援ではなく両立支援の方が効くと考えているわけです。これが、もう1つの「続けている理由」です。

こういった想いを持ちつつ勉強会を主宰しておりますので、勉強会の参加者を増やすことも大事ですが、勉強会の存在を当事者以外にも広く知らしめること、そして勉強会をちゃんと継続することも、それ以上に大事だと思っています。問題意識やビジョンに共感してくださる方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひご協力をお願いします!

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いろんなきっかけをもたらしてくれた大好きなムスメと。



posted by Kokubo at 06:25| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 育休プチMBA勉強会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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