2014年12月08日

【もしベビ】コソダテとキャリアの両立を阻む問題構造

SNSで大変話題になっているサイボウズのCM。

サイボウズ ワークスタイルムービー「大丈夫」
http://cybozu.co.jp/company/workstyle/mama/

いろんな感想があると思いますが、ワーキングマザー当事者であり経営学研究者としての私の感想は次の4つでした。

1)この女性は、プロジェクト・マネジメントをはじめとするマネジメント思考をもう少し身に着けることで、両立が楽になる。
2)この女性が働く会社(部署)の中間管理職は、チーミングをはじめとするマネジメントスキルをもう少し身に着けることで、部下の離職を防げる。
3)具体的な解決策の提案がない当事者の訴えはただの権利主張にしか見えないが、これはサイボウズという女性色が薄い組織が、解決策としてサイボウズのソフトウェアを提案していることで(CM単体ではわからないのが難点だけど)、権利主張ではなく問題解決に見える。
4)この働く母親のネガティブイメージを見せられた次世代の女性は、「コソダテかキャリアか」という選択をしなくてはならないと思うだろう。

このCM、いい問題提起だとは思うけど、最後のコピーだけがいけてない。
私は「よりそう」よりも、「この状況を変えよう」であって欲しかったと思いますねえ。だってこれ、女性だけの問題じゃないもの。

プレジデントオンラインにも取り上げられた育休中に友達と始めた勉強会授乳しながら学べる「育休MBA」)の教材を作るために、自由研究としてコソダテとキャリアの両立に関する問題を調べていたのですが、そこでわかったこととして、両立を妨げる要因(コソダテ女性が離職に至る要因)は、@女性個人の課題とA企業側の経営課題とに大別されます。なお本来@は女性に限らず子育て中の社員すべてが該当することでもありますが、ここではその多くを占めるのが女性であることから、女性の課題として話します。

@女性個人の課題としては、仕事タスクや家事育児タスクを抱え込む傾向があり、自分が頑張ることで何とかしようという思考が強いこと、“組織で”成果を出すという思考とスキルが欠如していること、が大きいです。コドモが生まれる前は仕事タスクが多くても長時間労働でカバーできるのですが、これがコドモが生まれてコソダテラッシュアワー前に退社するライフスタイルになると一気に回らなくなりますし、普段一人で仕事することに慣れているとタスクを形式知化しないので、緊急時に別の人が引き継ぎにくい、負荷が集中したときに周りがサポートしにくい仕事の仕方をしていたりします。つまり一人で頑張ろうとするがゆえに破綻する、という構造があるように思います。家事育児タスクも、任せられないという事情があるのかもしれませんが、自分が動かなくても回るようにするにはどうするかを考えておく、つまり「他者を使ってものごとを成し遂げること」と定義されるマネジャー視点(中原,2014)で脳みそを使えるか否かは大きいのではないかと思います。

A企業側の経営課題としては、恒常的な残業があることが大きいです。残業しないワークスタイルであれば、コソダテとキャリアの両立はそれほど難しいものではないと考えています。残業が発生する理由は、戦略上避けられない結果である場合(普通の人の3倍働く人が集まっているコンサルティングファームとか)を除き、長時間労働をよしとする組織文化がはびこっていることと、プレイングマネージャーが多くマネジメント業務がおろそかになり組織の生産性が低くなっていること、だと思っています。組織文化は成員の行動を規定しますから、時間をかけることを評価する文化である限り残業はなくならないです。また、組織の文化は意思決定サイドがつくるので、現場の社員やコソダテ当事者だけではなく、意思決定者(経営者や管理職)が考え方を変えないと、この残業文化は変わらないと思います。中間管理職が機能しない組織がカオスに陥ることは、説明するまでもないですね。

で、この@とAが合わさり、企業側は任せられない、女性側は引き受けられないという状況になり、ただでさえ低い組織の生産性はさらに低下し、そのうえで短い時間の中で業務をこなすコソダテ女性はコミュニケーションに割く時間を削りがちなためにコミュニケーション不足に陥って状況は悪化。最終的にはコソダテ女性を頭数に数えない業務フローが出来上がり、コソダテ中の男性を含む男性が残業させられ、そして夫が長時間労働をせざるをえないために家事育児タスクが妻だけにのしかかり、さらに仕事をしづらくなる・・・という構造になっているなーと感じています。

こうして、サイボウズCMがあぶりだしている状況は出来上がっています。
社会問題は構造問題であるということをしみじみと実感します。

では、どこでこの不幸なループを断てるのか?

@については、女性はもっと組織やチームで成果を出すための働き方を学ぶ機会があってもいいかなと思います。つまりマネージャー視点を持つためのトレーニングが有効なのではないかと。Aについては、管理職に労務管理だけでなく組織を動かすための知識やノウハウを学ぶ機会があってもいいかなと思います。つまりこちらも、マネージャー視点を持つためのトレーニングが有効なのではないかと。あと、労働時間で評価しない人事制度や組織文化が必要ですね。

もちろんこれだけでは根本解決にはならないけれど、とりあえず今の自分は、そういうトレーニング機会を作るということは出来る。ならば作ろう、と。私は、自分たち世代のうしろ姿を見ている次世代の女性たちが、コソダテとキャリアのどちらかを諦めずに済むような社会を作っていきたい。選ばないのは個人の自由だけど、諦めざるを得ないという状況はなんとかしたい。たとえ地味で小さな一歩でも、この社会問題の解決策の1つになればいいな、せめて対症療法になればいいなという想いで、私は育休プチMBA勉強会をやっているんだなという結論に至りました。

勉強会の参考書。
駆け出しマネジャーの成長論 - 7つの挑戦課題を「科学」する (中公新書ラクレ) -
駆け出しマネジャーの成長論 - 7つの挑戦課題を「科学」する (中公新書ラクレ) -





posted by Kokubo at 06:34| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | もしベビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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