2013年03月17日

フューチャーセンターを立ち上げてみた(4) 立ち上げてから考えたこと

見切り発車で始めた定期フューチャーセンターなので、細かいところはほぼすべて動きながら考えました。代表的なものは当日のオペレーションです。

社会人が参加しやすいよう夕方開催にしたものの、夕方はお腹がすきますし、お腹が空いているときにいい議論はできません。なので途中からサンドイッチのような軽食を地元の商店街で調達して出すようにしましたが、実際にやってみると一緒に食事をするというのは場が和むので、いいアイスブレイクになることが分かりました。しばらくすると社会人参加者から、軽食を出してもらうのにお金を払わないのは却って参加しづらい、参加費をとってくれたほうがありがたいという声が上がりまして、軽食代をいただくことにしました。ただ学生が参加しやすいよう、収入差のある学生と社会人で傾斜配分をする共済型です。ここで金銭的に自立するしくみになったことで、運営もぐっと楽になりました。食事係はその日の参加費を免除するというインセンティブを設定して、毎回食事を準備する係を学生が持ち回りでやるシステムも取り入れました。

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食事の準備。

部屋のキャパシティ的に上限は20人なので、定員20人とし、超えると参加受付をストップします。開催通知と参加の申し込みはfacebookのKOKULABOグループ機能で管理しています。これは食事の準備をするためにあらかじめ参加人数を把握することを目的として導入したしくみなのですが、参加人数が予測できることで運営は楽になり、また事前に誰が参加するかが実名で分かることでさらに参加を促進するという効果もあるようです。ちなみにこのグループをつくったあたりから、「KOKULABO」という概念が生まれました。直接的には国保ゼミの学生とそれを取り巻く社会人のバーチャルコミュニティなんですが、「教育現場と社会との溝を埋めるために学生と地域の社会人が交わる場所」として定義しています。

また、フューチャーセンターの中での時間の使いかたも試行錯誤の中で決めていきました。GEさんに伝授してもらったGE式ワークアウトをベースに、ブレインストーミングと問題解決のやり方を基本形にして、テーマによってブレストか問題解決かを使い分けています。

しかし1つのテーマに対してのやるべきことはこれで明確になったものの、全体のタイムスケジュールの組み方のようなところはなかなか決まらず、ここが決まってないためにグダグダになるということがしばらく続きました。国保ゼミのフューチャーセンターは学生がファシリテーターを担っており、必然的にプロの場づくりスキルには及びません。ファシリテーターが不慣れで、タイムスケジュールも定型がない、参加者やテーマは当日にならないと分からない、というように不確定要素が多いとカオスになるということが分かりましたので、固定できるところは固定していこうと思い、タイムスケジュールは型を決めることにしました。その結果、現在は以下のような流れで運営しています。
  18:00 開場、受付
  18:30 軽食を食べながら自己紹介でアイスブレイク
  19:00-21:00 ディスカッション(1テーマにつき20-30分程度×3,4テーマ)
  21:00-21:15 参加者同士で気づいたことをシェア

わりと大事なのは、最後に気づきをシェアするところです。ワークショップ技法ではチェックアウトとも呼ばれるようですが、これによって参加者はこの日の経験を俯瞰し、自分の中で意味づけることになり、経験学習サイクルが回ります。ディスカッションだけだともやもやしてしまっても、全体を経験として俯瞰することでスッキリして満足感にもつながるようです。

ところで、一般的なフューチャーセッションでは、プロのファシリテーターが進行を担っていますが、国保ゼミのフューチャーセンターでは学生がファシリテーターをしています。私がやるべきかどうかは少し迷ったのですが、私がいないと回らないフューチャーセンターを創りたくなかったので、学生に任せると決めました。最初はかなり拙い進行で参加者に満足してもらえるものになるのかどうかハラハラしましたが、回を重ねるごとに周りのやり方を見て覚えるのか腕が上がっていきましたし、想定外の学生ファシリテーターならではのメリットもたくさんありました。例えば、学生が運営を担っていると、参加者側が完璧な運営を期待しないので、至らないところがあっても皆でカバーしようという雰囲気が生まれ、皆が主体性を持ち始めるという効果があります。これが企業フューチャーセンターで、プロのファシリテーターが相手だと参加者がお客さんになってしまうというか、サービスを「与える人」と「受ける人」という構図ができてしまう場合がありますが、国保ゼミのフューチャーセンターの場合、参加者が場の雰囲気に責任を感じることで当事者意識が醸成されるようです。だから変な雰囲気になると参加者の誰かが助けてくれる(笑)。

そして国保ゼミのフューチャーセンターにおいては、この学生たちが醸す「完璧でなくてもいい」というメッセージが人を安心させるみたいで、「居心地がいい」「発言しやすい」という感想を、本当によくいただきます。フューチャーセンターの情報発信をしているFuture Center News Japanに載った際も、居心地の良さがフォーカスされました。
抜群の居心地。静岡県立大学国保ゼミフューチャーセンター

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学生ファシリテーター

学生の存在が醸すメッセージは意外と影響が大きいようで、クリエイティブなディスカッションのために大事なゼロベース思考と上下関係のないコミュニケーションも、実務と組織の経験がない学生がいると難なく実現できます。加えて、人は搾取する意図がない相手を信頼する傾向がありますが、学生は利害関係を感じさせないため信頼関係を構築しやすいようで、初めての参加者ともあっという間に打ち解けていたりします。その信頼関係の上で行われるディスカッションはクリエイティブなもので、以前に地元の海苔メーカーさんが海苔の新商品開発のためのブレインストーミングを学生と一緒に行ったところ、社会人が一人3〜5個のアイデアしか出せなかったのに対し、学生は10〜20個のアイデアを出すことができました。このあたりは"大学生の力を地域に活かす「大学発フューチャーセンター」"にまとめています。

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出てくるアイデアの量は豊富

そして、学生のとても大きな役割として「未来を可視化する」という点があります。人間は、これからの未来を生きる存在を目の前にすると、それを無視した意思決定はなかなかしにくいようで、学生がいるとおのずと未来思考になります。加えて、基本的にプロジェクト遂行上の課題を議論するので、一歩間違えるとすごくマイナス思考な場所になってしまうのですが、現実を知らないがゆえに将来に対して基本的にポジティブな学生のコメントは、周りの社会人にもポジティブ思考を伝染させるため、結果的に前向きな場となります(ただし未経験であることを責める人がいると学生が委縮してしまってこの効果は出ません)。これはとても大きな影響があるみたいで、国保ゼミのフューチャーセンターでも学生が少なすぎる日はあまり前向きな議論にならなかったりするのが不思議です。

ただ未来を可視化する存在としては、参加者のマジョリティより未来の可能性が大きい存在であれば学生じゃなくともいいと思います。ある人にエネルギー問題をディスカッションするために地域の人が集うフューチャーセンターを作りたいという相談をされたときには、子どもの遊び場を真ん中に作ったらいいんじゃないかと提案しました。ディスカッションの最中に未来を生きる人が視界に入る、ということが大事だと思っています。

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基本的にポジティブな雰囲気

なお、これらの場の運営方法の具体的な作りこみは漠然とやったわけではなく、フューチャーセンターの立ち上げとほぼ同時期に産まれた1つのプロジェクト(茶の和プロジェクト)を中心に据えて、「このプロジェクトにとって使いやすい場の要件」をフューチャーセンターとして作りこんでいった結果です。具体的なパイロットプロジェクトを持ったことで、漠然としていたフューチャーセンターの必要要件を具体化することができました。なので、これからフューチャーセンターの立ち上げを考えている人は、こういうパイロットプロジェクトを設定するといいのではないかと思います。


(5)立ち上げから1年経って考えること
posted by Kokubo at 08:58| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | フューチャーセンター日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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