2013年03月15日

フューチャーセンターを立ち上げてみた(2) 立ち上げ前にやったこと

フューチャーセンターを立ち上げようと決めてから、オープンゼミを1年間運営してきた1期生と、その1期生に憧れて国保ゼミに入ってきた2期生とともに、2011年3月25-26日で震災前から企画していた春のゼミ合宿を実施。その合宿では、国保ゼミとしてのミッションやフューチャーセンターのコンセプトについて徹底的にディスカッションしました。

この合宿には、以前から親交があった中央精工株式会社を経営する中村克海さんが参加してくださり、ゼミのミッションとフューチャーセンターのコンセプトづくりにご協力いただきました。中村さんは「普段と全く違う視点で会社経営を考えられる」(静岡新聞2010.11.22記事)からと、定期的に研究室に遊びにきてくれていたのですが、経営学を学ぶ学生にとっては実際の経営現場の話が聞けてプロジェクトの相談にも乗ってくれる中村さんは貴重な存在であり、憧れの社会人でした。

そんな中村さんの意見が交じったことで、自分たちのやっていること・やろうとしていることの価値を客観的に確認することができたように思います。また、学生や私だけだと教育現場側の視点にどうしても偏ってしまいがちなところを、中村さんが産業界や地域社会からの視点をもたらしてくれたため、コンセプトのバランスが良くなったとも思っています。

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5時間くらいを費やした合宿のミッションミーティング

ちなみにその時にディスカッションの末に学生たちが決めた国保ゼミのミッションは、「問題の本質を全力で見つけて解決できる人を育て、輩出する」で、そしてその成果の指標が「卒業時に、やりたい仕事が明確になった人の輩出率」でした。2年経ってみて、これは割と達成されているのではないかと思います。

また、中村さんはこの国保ゼミのフューチャーセンターが地域にとって必要なものであり、地元企業として応援したいからということで、立ち上げ資金を企業として寄附してくださいました。これは本当にありがたく、学生が主に運営を担う国保ゼミのフューチャーセンターの立ち上げと運営という目的において、学生のために使える資金があるというのは助かりました。このお金によって、立ち上げスピードと成功確度が大きく高まったと思っています。

ちなみにその資金を使って最初にやったことは、テーブル作りでした。せっかくいただいたお金ですので何か1つは象徴となるモノに使いたいと考え、ゼミ生が増えたことで手狭になった研究室のテーブルをこの機会に買い替えることにしました。ゼミでもフューチャーセンターでも活動の中心はディスカッションなので、ディスカッションに適したテーブルを皆で選ぼう!ということになり、ゼミ生全員と中村さんとで、地元でセンスのいい家具を扱うクラフトコンサートさんに出かけました。ここにはとても雰囲気がよい部屋があり、フューチャーセンターもこういう雰囲気にしたいよねと話すことでフューチャーセンターの空間イメージを共有しつつ、テーブルの形や大きさを皆で考えました。そして検討の結果、フリッツ・ハンセンのスーパー楕円テーブルがいいねということになりました。楕円なので上座下座ができず、皆でフラットに、程よい距離感でディスカッションできるのがいいというのが理由です。ただ後述しますが、このテーブルに関してはエピソードがあります。

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目指した空間のイメージ

そしてテーブルを決めて数か月後には、次はテーブルに合わせて研究室全体をリフォームしました。活動そのものは学生たちが担っているので、私は環境面での整備を担当しようと、学生たちが使いやすく、学外の方が寛ぎやすく、というあたりを主眼においてレイアウトを考え、これもクラフトコンサートさんにお願いして、自然と会話が生まれるような居心地のいい空間をデザインしてもらいました。なおこのときのイメージにあったのは、ドコモがiモードを開発したときに重要な役割を果たした「クラブ真理」で、多様な人がカジュアルに混ざり合った状態が新結合(イノベーション)に繋がるので、色んな人が集い、出会い、静岡や日本の未来を創るイノベーションが生まれる場になることを目指していろいろ考えました。とはいえ、ハードウェアにお金をかけることには若干のためらいがあったのも事実です。活動がメインなんだから、ハコは何でもいいんじゃないかなあと。でもこのときも中村さんに「経営者が訪れておおっと思うような空間にしたほうがいい」と言われて、そんなものかなあと思った記憶があります。でも結果的に中村さんが正しかったです。リフォームしてから明らかに人の在室頻度があがり、ここに来れば誰かがいるという状態ができました。またステキ空間で過ごすことで、自分たちのやっていることがそれだけ意味のあることだという意識も芽生えるようです。投資効果は十分あったなあと今では思っています。

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昔の研究室の様子。やっぱり違うよね!

さらにハードウェアだけでなくその上で動くソフトの充実も必要だということで、ディスカッションを通じた問題解決ツールを身に着けるために、GE社のご厚意により、合理的意思決定のメソッドであるGE式ワークアウトのセミナーを学生向けに実施していただきました。もともとは企業向けのこのワークアウト、社会経験のない学生相手にどこまで伝わるかなあと当初は危惧していましたが、やってみたら全く問題なかったです。寧ろ社会人では出てこない斬新な意見があったりして、GEの講師の方々にも楽しんでいただけたようです(GEの方も学生向けにやるのは初めてだったそう)。このときに学生たちからは、「1人では限界がある問題解決も、チームや組織になると自分が思いつかないような意見、面白い意見があり、問題解決のためにチームや組織の重要性を改めて感じることが出来た」「今までの自分の思考回路に無駄がたくさんあったことに気付いた」「原因を自分たちに置くことの重要性を学んだ」「ファシリテーションの重要性が分かった」等の感想が出ており、フューチャーセンターにつながる学びとなりました。その他にもいろんな社会人の方に様々な形でご協力いただきつつ、ソフトを充実させていきました。

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GE式ワークアウトのセミナー風景

そんな経緯を経て、2011年9月28日に第1回の「定期フューチャーセンター」を開催。それ以来ほぼ毎週開催しており、この2013年3月4日には第62回目を開催するに至りました。運営は学生が持ち回りで行っていますが、毎回12〜20名程度の学生と社会人の参加者があり、フューチャーセンターが扱うプロジェクトも増えてきています。

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現在のフューチャーセンターの様子


(3)前例のないものをつくるために

posted by Kokubo at 08:50| 神奈川 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 地域と大学(フューチャーセンター) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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