2012年10月10日

文化と社会

お仕事で、今年3度目の金沢へ。今回もセミナー講師ですが、なんと会場が石川四高記念文化交流館という歴史的建造物でした。最近、教育を行う上では思考を切り替えるための装置として「箱」はけっこう大事なポイントだと感じていまして、だからこういう場を教育に使えるなんて素敵だな〜と思います。
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さて今回は、初めて少し時間に余裕のあるスケジュールでした。いつもとんぼ返りなので、せっかくのこの機会は活かさねばと少し調査をすることに。こういった種まきの時間が次の研究に繋がることもありますし。

まず、懐石料理を食べにいく。いろどり事業を研究して以来、機会あればツマモノを見ているのですが、金沢は茶の湯文化が発達しているのできっと懐石文化も発達しているはず、きっと面白いツマモノ遣いがあるはず、と考えたのです。加えて、今回九谷焼の視察に行く予定だったので、事前に現場をリサーチしておこうと思いまして。

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ツマモノがあるだけで料理の雰囲気はがらりと変わります。上ははマグロ漬け寿司のパルメザンかけ。穂紫蘇の花が散らしてあります。後方のお皿は鴨と素揚げ銀杏のマスタード和えで、こちらも彩りがキレイ。あと写真は無いのですが、1皿目の先付けは虫かごのような器に敷き葉と萩の花があしらわれ、9月のまだ残暑が厳しい中でも虫の音が聞こえるような演出がされていました。

さて、食事をしながら板前さんと話したのですが、意外だったのが「九谷焼は店では使わない」と言われたこと。「金沢の人は自宅で九谷焼を使っているので、店で出すと被るときがあるんですよ(笑)」だそうで。歴史もあるし、もっと高級品扱いをされているイメージを九谷焼に対して持っていたけど、もっと日常に馴染んだものなのかもしれません。

(食べきれなかった玉蜀黍ごはんはお土産にしてくれました♡)
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2つめの視察は、九谷焼の現場見学!伊野正峰株式会社さんの工房を訪問させていただきました。

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決して小さくない工房のようですが、普通の民家が工房になっていて、興味深かったです。職人さんが実際に作業していらっしゃって、こういうの見るの大好き。

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九谷焼というといわゆる赤絵や青粒、古久谷などを私はイメージしていたのですが、これはごく一部なんですね。工房にはもっと幅広い商品がありました。訊いてみると、それほど厳密な九谷焼の定義があるわけではないようで。ブランディングを考えると、例えば大島紬のように明確な定義や承認制度があったほうがいいんじゃないかと思うけれど、地元に溶け込むためにはそれくらい緩い方がいいのかなとも思う。

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上は伊野正峰株式会社さんの商品「白九」という白い九谷焼のロックカップ。九谷焼は絵付けがメインなので、絵が載せやすいようどうしても平坦な形になるそうなのですが、そんな中で形状に工夫を加えたり、白地を多く残したりした一品。逆転の発想ですねー。


既に何度も訪問してはいますが、金沢21世紀美術館にも足を運ぶ。

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この美術館は妹島和世+西沢立衛の設計で、コンセプトは「まちに開かれた公園のような美術館」なのだそうです。そしてそのために以下のような工夫が施されているそうです。
・三方が道路に囲まれている美術館敷地内にどこからでも人々が訪れることができるよう、正面や裏側といった区別のない円形が採用されました。建物が街と−体になるためのデザインです。
・展示室やカフェレストラン、アートライブラリーなど、それぞれに個性豊かな各施設はほぼ水平方向に配置。街のような広がりを生み出します。建物の回廊部分を一周すると、様々な特徴のある施設を巡ることができます。
・外壁や建物内の壁面の多くにガラスを採用し、「透明であること、明るいこと、開放的であること」を求めました。同時に、内部と外部など互いに異なる空間にいる者同士が互いの様子や気配を感じ取ることができる、出会いの感覚も演出されています。

(出典はこちら

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この「まちに開かれた公園のような美術館」である21世紀美術館は、無料で入場できる(交流ゾーン)ところと、入場料を払わなければ見られないところ(展示会ゾーン)とがあります。交流ゾーンを歩いていてもそこそこ楽しめるわけですが、ところどころに展示会ゾーンへの誘いが仕込まれていて見事な感じ。まずは地域に馴染む美術館として足を運んでもらうために無料でも楽しめるところを確保して、そのうちの何割かに美術館の事業を支えてもらうという設計思想が透けて見え、大変興味深かったです

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例えばこの美術館の象徴的な展示物である「Swimming Pool」は、「交流ゾーン」に位置します。そして上から覗くと、水の張られたプールの水底に人がいるのが見えて不思議!で、この水底にいくためには入場料を払って「展示会ゾーン」に入ります。

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これは交流ゾーンから見た展示会ゾーンとのパーティションで、向こう側は展示会ゾーンです。ガラスなので向こう側が見える上、微妙に壁とパーティションに隙間があるのが見えますでしょうか。完全に分断しておらず、展示会ゾーンと交流ゾーンが緩く繋がっているので、芸術は日常の延長にあるという感じがします。

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交流ゾーンには、他にも子どもが遊べるコーナーがあったり、

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デザイナーズ家具に座りながら展覧会カタログや専門書籍が閲覧できるアートライブラリーがあったりして、子どもや学生が気軽に足を運んでいるという印象。こうやって小さい時から美術館が身近なものとして刷り込まれていれば、大きくなったときにはお客さんになって支えてくれるよねーと思います。

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余談ですが、アートライブラリーには、わが研究室のテーブルを創る際に模倣したハンセンのスーパー楕円もありました(でもやっぱりちょっとカタチが違う・・・笑。学生たち曰く「うちのはスーパーを超えたハイパー楕円だから」なんですが)。ここでグループワークとか出来るわけですよ。贅沢!

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この美術館には、赤い漆塗り(紅殻塗り)の天井が斬新な茶室もあります。加賀藩13代藩主の前田斉泰の居室として建築されたものを移築してるそうですが、この茶室、市民がお茶会を開催するために借りるときにはお茶道具までも貸し出してくれるそうです。市民の茶道リテラシーを信用してのことでしょうが、お茶会の企画が気軽に出来ていいねーと思う。

美術館近くの株式会社能作さんでは、金沢塗・山中塗を見せていただく。ここでも金沢塗・山中塗・輪島塗の定義をお聞きしたのですが、明確な区分があるわけではない印象でした。ただ県外の消費者としてはそこが気になってしまうのですが、地元の方は見た目で何となく分かるということだったので、あえて意識する機会がないのでしょうね。確かに私も、「掛川茶の定義」とか「富士宮焼きそばの定義」とか訊かれても答えられる自信はないです。

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これは昔実際に使っていた漆を練る道具で、ドイツの漆美術館にも寄贈したそうです。長い年月をかけてしみ込んだ漆がつやつや。

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自分用に白漆のコーヒーカップを買ってみた。熱伝導しないから熱いものを持てない私にはありがたい。


今回の金沢の視察では、伝統文化や伝統産業が地元の暮らしの中に深く根付いていることを実感しました。子どもの頃から日常の中に文化や産業があるからこそ、大きくなったときにそれらを支える消費者になるのかもしれません。いい文化や産業を育てるのは消費者であり、文化や産業が衰退しているということは次世代の消費者をちゃんと育成してこなかった結果なのかも。その点で、株式会社和えるさんの目の付け所は鋭いなあと改めて思います。

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よく知らなかったんですが、能登は素敵なデザイナーも多いみたい。上はいただきものの能登で作られているというnotodesign x aikoの本革iphoneケースですが、iphone5への移行計画が先送りになったほど素敵!能登のデザイン事務所と革製品の職人さんが作っており、ネット売上が8割くらいなんだそうです。商品に魅力があれば立地はハンディになるどころか、プラス要素なんだなと思いました。「能登で手作りされている本革iphoneケース」って、なんかロマンを感じます。


posted by Kokubo at 20:58| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | おしごと日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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