2012年07月28日

金沢出張で考える「地域と人材」

先日仕事で金沢に行きました。慶應ビジネススクール時代からずっと担当させていただいている、石川県主催の経営者向け研修「石川経営天書塾」の講師のお仕事です。数えてみたらもう5年目!おかげさまで評判がいいらしく、ここ数年は集客のためのデモ授業も担当させていただいております♪
(過去の訪問記は ここ とか ここ にあります)

さて、この授業を担当している間に、私は東京を離れて、静岡の大学に移りました。週末はオットのいる東京の家で過ごしていますが、自分の意識としての拠点は静岡だし、住民票も静岡です(笑)。慶應にいた時から地域活性化に興味を持っていたけれど、実際にこうして自分が地方都市の1つに移ってみると、東京にいたときには見えなかったものが見えるようになりました。例えば、「地域」という単語。例えば東京にいると、静岡や金沢を「地方(都市)」って呼んでしまったりするけれど、地方都市に身を置いていると「地域」というワーディングの方がしっくりきます。理由を考えてみると、「地方」はその前提として「中央」がある概念なので、自分が中央に居るときは対立概念としての「地方」が見えてくるのですが、自分が「地方」に居るときは「中央」を意識しない(自分が中央ではないという感覚が無いともいえる)ので、「地方」ではなく、自分のいるところを中心として特定の地理的範囲を定義できる「地域」という言葉の方がしっくりくるんじゃないかと思います。

ところで、地方都市に身を置いていると、直接的な学びを享受する「機会」や知的好奇心を刺激される「機会」の相対的な少なさは実感します。インターネットが普及しているので、情報の格差はさほど感じないのですが、例えばセミナーとかインターンシップとか、そういった「学ぶ機会」が身の回りに転がっている東京に比べて、例えば静岡ではそういう機会が本当に少ない。もともと意欲がある人は東京まで機会を求めて足を運ぶからあまり差が生まれないけれど、現時点ではそこまで意欲があるわけではない人(そしてふつうの社会ではこれがマジョリティ)の潜在力を開花させるような刺激や体験のきっかけが少ないなーと思います。そしてその結果、地方都市の人材は同質化が進み、多様性が低くなるのではないかと。ただ大学入学時点では、意外と志望しているキャリアの多様性が高いということが分かりまして、その後特定の方向に収束していくような印象を持っています。(注:あくまで私の個人的な感想だということをご了承ください。そして多様性の低さが良い悪いという話ではありませんで、もし後述するような人材を輩出する社会を求めるならば多様性を大事にするべきではないか、という話にすぎません。反対意見も常に歓迎です)

さて、今回の金沢の仕事もそうなのですが、私は割と地方都市における経営者教育とか、企業家教育に携わることが多いです。そこで感じるのは、地域産業の隆盛と人材育成の関係です。どんな産業でも時代とともに隆盛があるので、地域産業を持続的に盛り上げていこうと思うときに必要なのは1)既存産業を成長させる人と、2)新規産業を生み出す人、だと思うんです。既存産業を維持する人だけでは、環境変化に適応できなくて産業は衰退してしまいます。そのためにもこれらの「産業を創る人」が社会には必要だと思いますし、そういうニーズが多いからこそ私が指名されるんだろうなーと思っております。で、そういった産業を創る人材を育てるという視点で考えたとき、上述した地方都市における機会の少なさからくる人材の均質化というのはとてもクリティカルだと思うんですよね。産業を創るための資源が少ないとは全く思わない(というか多い)んだけれど、資源をうまく活用して産業を創れる人は少ない、というのが私の印象です。ただ、これは人的資源の能力の問題ではなく意識の問題なので、逆にいうと機会や刺激を少し恣意的に作ることで、可能性が広がる人や産業が地方都市には多い、ということでもあります。

ならば学ぶ機会を創ればいいと思うんですが、そこで重要になってくるのが大学(地域の教育機関)や行政の役割だろうと考えています。東京はすでに市場が出来ていて民間の教育機会が豊富かつ効果的なので、あえて行政が人材育成を担う必要はないと思うんですけど、地方都市ではまだ市場として成り立っていないので、ここは公的資金を投じていいのではないかと。しかし静岡を見る限りでは、行政が行う人材育成というのは、雇用対策という側面が強いわけです。これはこれで大事だと思うのですが、これだと既存産業を維持する人が育成されることになります。一方、天書塾の事務局を見ると、「石川県 商工労働部 産業政策課 産業人材政策室」となっており、産業を創る人材を育成する、という思想が透けて見えるんですよね。私は静岡県よりも石川県とのお付き合いの方が先だったし、民間企業から転向した身としては産業のためには人材育成って当然重要だよねくらいの感覚だったのですが、静岡県職員の方に言わせると行政的にこの位置づけはとても先進的なんだそうです(余談ですがこういう行政の思考回路が学べたのも、県立大学に赴任して得たものの1つです。民間企業の思考回路はMBA時代に叩き込まれた)。ぜひ静岡も石川県を見習ってほしいし、個人レベルでもこういう人材育成を担っていきたいです。

もう1つ、産業を創る人材を育成する上で大事であり、石川県で実現されていることとして、「良質な経営者コミュニティ」の存在です。経営者は経営者にしか分からない悩みが多いし、社内の人間や取引先に相談するわけにもいかないので、同じ立場にある直接的な利害関係のない人とのコミュニケーションは貴重ですが、こういったコミュニティがあることで学びは促進されます。この石川県の研修では、研修OBによる経営者コミュニティが出来ていて、それがとてもいい感じ。OBに進められて新たに受講する人も多いようです。組織は何らかの目的のために生まれますが、いったん既得権益を持つと、もともとの目的から逸脱してその既得権益を保持するために組織の維持が目的になることが少なくありません。ですがこのコミュニティは既得権益があるわけではないので、本当にそこで交わされるコミュニケーションに価値を持つ人しか残らないし入ってこないので、健全な新陳代謝が行われた状態でコミュニティが存在しています。これが既存の若手経営者団体と少し違うところだと感じています。そして、私がフューチャーセンターなどを通して静岡で実現したいのも、こういう経営者+経営者予備軍のコミュニティなんですよね。

というわけで人材育成という面で見習うところの多い石川県ですが、文化的にも魅力が多く、今回はfacebook経由で金沢出身の方に教えていただいた観光コース(2時間バージョン)を堪能しました。その中でも武家屋敷跡野村家が素晴らしかったです。海外専門誌などでも高く評価されている日本庭園が美しいですが、さらに石造りの階段を上ったところに茶室があり、眼下に庭園を眺めながらお抹茶を頂くことが出来るんです。これが最高の気分転換になります。当時の武人には気分転換が出来る“装置”は大事だったと思うし、その点で茶道が貢献した部分は大きいだろうなと思います。オススメです!!

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庭園を眺めながらお薄をいただく。

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茶室の入り口に飾られているお花。こういうところに文化の厚みを感じます。

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庭園。

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茶室の掛け軸は「今日無事」。


金沢はまた9月に行く予定。楽しみ〜〜〜〜〜。


posted by Kokubo at 13:11| 神奈川 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | おしごと日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 学びの機会を自分で見つけるのも、それもまた学びかなと思います。それは子供の頃の遊び方に大きく影響を受けていると感じます。

 娘が幼いころ私は独立したばかりで契約を取るための営業活動をしていました。 ロングバケーションと呼んでいます。 保育園に通っていた娘の送り迎えは私の担当で、それ以外にも娘とはたくさん遊び時間を共有できました。父親として貴重な経験でもありました。 娘とはよく近所の神社で遊ぶことが多く、天気のいい日は殆ど毎日。神社仲間のお友達も増え皆で楽しい時間を過ごしていました。神社の一見ありふれた環境をいかに楽しんでいたか。 今思うと膨大な時間を過ごしていたことに驚きます。何もないように見える場所で子供たちは色々なものを見つけ楽しむものですね。私もこう言う遊びは大好きで時間を忘れて娘たちと過ごしました。 いま彼女は高校生となり随分遊び方も変わってきました。まぁ変わって当然ではあるのですが。 携帯・カラオケ・プリクラ・コンサートなどなどお年頃の遊びを楽しんでいます。 大きく違うのは遊びの探し方で、以前は楽しみ方を探していたのに対し、今は提供される楽しみの中から選んでいるように見えます。悪いことでは決してありませんが、バランスは大切だなと思います。

 私はビジネスモデルを組み上げる事と、子供の頃、自分も経験していた皆で楽しく遊ぶ環境を作ることは似てるなと感じています。

 学びも機会は様々な所に存在し、それを感じ取ることができれば新たな発想への気づきとなる のかなぁ。 必要なのは感じ取る五感(六感も大事かも)。 それを研ぎ澄ます機会を作るお手伝いができたら嬉しいなと思っています。
Posted by 前島 at 2012年08月01日 16:55
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