2010年01月30日

パティシェの経営学

いっぱいいっぱいの日々が続いてちょっと疲れが溜まってきていたので、所用でオットと自由が丘にでかけたついでにモンサンクレールまでケーキを食べに行く。気分転換はおいしいものに限ります。

モンサンクレールは週末はいつもいつも激コミなのだけど、幸い少し遅い時間だったのでお店に入ることが出来ました。ここのケーキはなんでも美味しい。今回はバレンタインデー用アイテムの「クール」がとってもとってもおいしかったです!オンラインでも買えるようなので、ぜひぜひ。味はもちろんですが、計算された複合的な食感と、それを支える製菓技術という点で、流石プロだと思える一品です。(私は自分でもケーキを作るので)

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さて、いつも大繁盛のモンサンクレール。ここに来ると、ケーキの美味しさもさることながら、オーナーパティシェ・辻口氏の経営者としての才覚にも感嘆します。いちパティシェとしてのポジションを確立するまでの奮闘にも感銘を受けますが(フランス修行経験が無いことをバネにして猛練習、など)、自分だけで終わらずに後進を育て、組織や企業としてお店を成立させている。最近ではプロデュース業などでも活躍されていらっしゃいますが、そういう現場を離れた仕事が出来るのってちゃんと若手が育っているからこそですよね。

自分が努力をして叩き上げてきた方ほど、アウトプットに対するこだわりや厳しさが邪魔をして他人を育てられず、そのため経営規模を大きくできないというケースを多々見てきたので、シンプルにすごいなーと思う。経営規模を大きくすることが必須ではないけど、安定のために必要な適性規模っていうのはありますからねえ。「人を育てる」って「人を信じようと腹をくくる」に等しい気がするけど、それが出来ずに規模が大きくならず、経営も安定しない(=待遇も改善されず)という状況は、特に職人的な世界には多いように思います。だからそれが出来ている辻口氏はすごいなと。数年前に奥の工房でお見かけしたことがありますが、組織マネジメントが出来る人だという印象でした。共感に甘えずに、人を動かせる・人を育てられる経営者はいいなあと思う。自分に厳しい人じゃないと出来ないことです。

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私は事例研究を主たる研究手法にしているので、ある一時点で切り取って分析するというより、経年変化の観測から見えることを分析することが好きなのですが、その点でもうひとつモンサンクレールの面白いところは製販のバランス。もう少し具体的に言うと、イートインスペースが小さく、製造スペースがやたら大きいところ。昔は左側の店舗兼工房しかなかったのに、いまや製造のための工房をもういっこ作っちゃってる。

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でも、建物を増やしてもイートインスペースは昔から規模が変わっていないどころか、縮小している。普通は建物を増設したらイートインの席数を増やすのに、逆をやってる。店舗が増えたし、単に混乱を避けるためなの対策なのかもしれないけど、考えようによってはテイクアウトや通販を重視しているからこそとも言える。そのために量産できる体制や、製造担当者が快適な環境を作っているのであろうと推測。でも、お店としてはテイクアウトや通販のほうが利益率いいんですよね。それに現場で価値を出している職人こそを大切にしている感じが伝わってくるので、もし私がちょっと腕に自信のあるパティシェだったら、こういうところで働いて腕を磨きたいと思うと思う。そうやって優秀な技術者が集まってきているのではないだろうか。この辺の見事な経営感覚は、ご実家の和菓子屋が倒産しているのを見た経験が大きいのかなあ、などとケーキを食べながら考える。

経営学というのは、それが目的になるととてもつまらないのだけれど、何かの目的を達成するための手段としては非常に重要。飲食ビジネスというのはこだわりと利益のアンビバレンスが常なので、待遇が良くないところも多いけど、こうやって経営能力のあるパティシェが規模拡大に成功したという事例が出れば、職人の世界も色んな面で発展するかもしれないし、して欲しいなあとココロから思います。


パティシエ世界一―東京自由が丘「モンサンクレール」の厨房から (光文社新書)

パティシエ世界一―東京自由が丘「モンサンクレール」の厨房から (光文社新書)

  • 作者: 辻口 博啓
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: 新書



↑ある起業家の物語としても読めます。





posted by Kokubo at 23:26| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日常と思考 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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