2009年09月29日

第7回マネジメント研究会・レポート

マネジメント研究会、第7回が終了しました。

今回の参加は10名。ケース名があまりにディープだったせいか、いつもよりずいぶん参加者が少なくなりました。この研究会は非営利活動だし、いろんなトライアルをすることも目的の1つなのでこれはこれで構いませんが、集客は重要なフィードバックなのでまたいろいろ考えるきっかけになりました。

さて、今回はテーマが2つありまして。

1つ目、表テーマとしては、「社会問題を経営課題に落とし込む」でした。最終目的は社会問題の解決だとしても、企業の経営課題に転換することで事業による対応が可能になります。それに「あるといいね」ではなく、困ってることを解決するという形にしたほうがお金は払ってもらいやすい。KBSには「ストレスマネジメント」という授業がある関係でメンタル問題のケースはけっこうそろっているので、それを使えば簡単だなと思い、今回は企業内のメンタル問題とその影響をテーマにする。今後は対象の幅は広げるためにも雑誌記事なども扱いたいのですが、まずはケースという安定教材を使ってトライアルです。

今回は「問題構造の理解」にウェイトを置きまして、参加者の理解度を見つつ、解決策についてはあまり突っ込みませんでした。私としては、この場では答え(魚)よりも考えるためのきっかけとツール(魚の釣り方)を持ち帰ってもらいたいなと思っています。治療に入っちゃうと臨床心理士のような専門家の指導が必要なので、私のような素人が触るべき領域ではないというのもあります。今回は、こういう問題が起こる可能性は常にあるのだという意識を平常時から持ってもらえるよう、問題構造を理解してもらうところ「まで」をまずは目指しました。(ただ本格的な研修なら、カウンセラーの同席のもと具体的な解決策まで考えさせたいですね)

というあたりから、もう1つの裏テーマ「管理者のためのストレスマネジメント」になります。前述のとおり、KBSには「ストレスマネジメント」という授業がありますが、それを担当しているW教授のスタンスを私は深く尊敬してまして、経営教育に携わるようになったときから、いつか扱いたいと考えていたテーマなのです。

カウンセラーかつ経営学博士であるその先生の主張は2つ(注:私の解釈です)。
1)経営者は組織に対する責任として、自らのストレスを管理しなければならない
経営者のメンタル問題はその企業を危機に陥れるので、自分は大丈夫と思うのではなく、自分も患う可能性があるということを常に意識して対応しなさい、と。欧米では、株主が経営者に強制的にカウンセラーをつけさせることもあるそうな。
2)メンタル問題は組織が内包する病理の発現であるから、管理者は組織的に対処するべし
メンタル問題はどうしても発生するものだから、発生したことを例外視するのではなく、個人を責めるでもなく、これは組織の潜在的な問題であるという前提のもとで、どう対処するかをシステマティックに考えることが重要である、ということです。

通常、メンタル問題は「個人」の問題であり、医師やカウンセラーのような医療プロフェッショナルが対応に当たる「治療」だと考えられていますが、これを「組織」の問題ととらえなおして対応することで、経営プロフェッショナルが対応しうる「発達促進」の問題にできる、だから経営に携わるものは一度はこういう教育を受けるべきなのだ、と。カウンセラーというお立場で対症療法を散々やっているからこそ、根本解決のためには予防医療を広める必要があるとお思いなのだと思います。

この主張は、私にとってはけっこう目から鱗。IT業界にいた私にとってメンタル問題はそれほど珍しい存在ではなく、外資系であったこともあって「そんな弱い奴はクビにするのが当然」というのが受講前の私の感覚だったんですが、この授業を経て、180度逆の考え方をするようになりました。例えば授業の中でうつになった部下の処遇に悩むマネージャーのケースをやったときは、某小売業の管理職は「常に人不足の小売現場では、こういう人をいかに作らないようにするかは管理者の仕事として重要」と話し、某人事部出身者は「職務としてクビにしなくてはならないけれど、個人では何とかしたい気持ちが強いので辛い」と話す。同級生の話を聞いて、メンタル問題は珍しい話ではないんだとも分かった(これは今回の参加者さんも同じはず)し、そんなに発生頻度が高い問題なのであれば、システマティックに対処しなければすぐに次の患者がでるだろう。そんなに多くの人が患っているのであれば、いつ自分がそっち側になってもおかしくない。

これは理想論かもしれません。でも理想をイメージしなければ、そこに近付くことはそもそもできないですよね。個人の治療(含む雇用維持)にかけるコストも少なくないのだから、だったらそれを予防のための投資に回せばいいんじゃないかとも思うし。というわけで、その気付きを少しでも多くの人にもたらしたいとずっと思っていましたので、今回取り上げることができて良かったです。


それから、さらに今回は後半の1時間を使ってもう1つのチャレンジをしました。

最近、インパクト東京(NPO法人ライフライツ)さんのプレゼンづくりを手伝っていたのですが、その過程で彼女たちにとって「相手の言葉で自分の事業を説明する」ことがいかに大変かというのが分かりまして。どうしても、「分かる人にしか分からない」説明になっちゃうんですね。私も昔はそうだったから、そうなる気持ちはものすごく良くわかる。でも広く人を巻き込むにはこれじゃいけない。なのでインパクト東京さんのご了承のもと、@まずインパクト東京さんに「自分たちの事業を紹介する」当事者プレゼンをやっていただき、A続いて私が「インパクト東京さんを紹介する」第三者プレゼンをやり、Bこの2つを比較しながら参加者に意見をいただきました。

比べられることはそんなに楽しくないとは思ったんですけど(私も信頼関係なきゃできないっす)、具体的なサンプル見ないとイメージ分からないだろうし、私の客観的で納得はするけど感情は揺さぶられないプレゼンと比べたことで初めて見えることもあるでしょうし。やってみたら参加者さんからのコメントがものすごーく勉強になりました。私自身にとっても、現場の人が求めているロジックの精緻度合とか、どうやったら専門用語を分かりやすく説明出来るのかとか参考になりました。ご協力本当にありがとうございましたああ!

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いつも通り、追記は参加者の感想です。

1. 本日のテーマ「ソーシャル・ニーズの事業化」について
メンタルヘルスは非常に身近に多い問題でありながら、タブー視されているところがあるので、企業の中でも一般社員もマネージャーも経営者も根本的な手を打てず、放置されているケースが多いのだと思います。いかに個人の問題を組織の課題としてとらえ、構造的に解決していくのかを考え、その点を訴求することが事業化に不可欠なのだと思いました。(Cさん)
・「社会の問題を経営課題に変える→経営課題の解決策を考える→企業に提案する」の観点での取り組みは今後社会でも大きな流れになってくると感じています。私自身の研究も似たアプローチで取り組んでいるため、手法の勉強になりました。(慶應SDM/企業勤務・Sさん)
・社会課題を経営課題に落とし込んでいく、というプロセスを一度経ることで、事業への外からの理解度が広がることはもっと一般で注目すべきポイントだなと強く感じた。(SVP東京・金井さん)
・メンタルヘルスと経営のつながりは考えたことが無かったので、面白かった。(Kさん)
・今回は課題の分析の時間が多すぎたと感じられたので、問題解決のためにどう事業化していくのかということにもう少し時間をとることができればよいと思った。前者の時間が多いと言うよりは、後者の時間が少ないと感じたので、全体の時間を増やす必要があるのかも。(テトラフォース・パートナーズ・杉浦さん)
・もやもやしました。(Kさん)

2. 本日のケース3本について
・個別に見ると一個人へのカウンセリングという観点で見てしまうところでしたが、横串で見ることで問題が構造化され、客観的に見ることが可能になったと思います。(Cさん)
・一見どれも違うケーススタディと思いましたが、一般化すると非常に親近感があり、かつ怖いケースで、もっとこのようなストレスマネジメントのスタディを不定期でもできればと思いました。企業研修に最適かも。(SVP東京・金井さん)
・社会問題→経営問題への落とし込みのアプローチは、メンタルヘルス以外にも応用できそう。(Kさん)
・私が携わっているクライアントでも、社会の心のケアの問題を解決するということは、重要な経営課題となっています。そのため個々のケースがどのような背景から起こるのかを考え、かつ他の方の意見をうかがえたのは参考になった。(テトラフォース・パートナーズ・杉浦さん)
・同じようなケースは身近にもあるので、客観的にとらえる考え方の勉強になりました。(インパクト東京・保科さん)
・自分の周りでは見ない事例であったので、まずはこうしたケースがあることが勉強になりました。またさまざまな観点から原因や気持の分析を聞くことが出来て、多視点からの意見がとても勉強になりました。(慶應SDM/企業勤務・Sさん)
・とても面白かったです。特にいつもはDVを受ける女性の立場から活動しているので、夫の立場から考える機会が持てて良かったです。(Aさん)

3. 本日のプレゼン2本について
・言葉の意味を定義しておくこと、目指しているところを明確にすること、サービスの提供対象を絞っておくと、とても分かりやすいプレゼンになると2本のプレゼンを見て感じました。同じ組織やサービスを2本のプレゼンで見ることは、表現や内容の差別化が分かるのでとても勉強になりました。(慶應SDM/企業勤務・Sさん)
・「私にとって?」という点と、すぐに行動に移さなきゃという感情的なゆさぶりがあると裾野が広がると思います。(Cさん)
・「違和」と「異和」については興味深かったですが、ちょっと難しく感じました。(インパクト東京・三宅さん)
・アドバイスや意見、少しきつく聞こえたかもしれませんが、ぜひ活動の事業化のサイクルが躍動していけばよいと思っています。(SVP東京・金井さん)
・事例を考えながらいろいろ考えさせられることもあった。(Kさん)
・これからどんどん良くしていけると思います。(Kさん)
・思ってもいない視点が出てきて参考になる。(インパクト東京・保科さん)


以上です。ありがとうございました〜。

posted by Kokubo at 17:06| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | マネジメント研究会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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