2009年09月01日

共感ドライバーに関する一考察

NEC社会起業家塾の最終選考会を見学にゆく。エントリーサイドにも、審査員サイドにも、事務局スタッフにも観客席にも知り合いがいましたよ。

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今年は6月29日にワールドビジネスサテライトで取り上げられたこともあり、62団体という過去最高のエントリー数だったそうです。おーすごい。そこから選抜された13団体のプレゼンを一気に見るだけでも大変勉強になります。相対的に見ることで各団体の強み弱みがくっきりしますし、自分の中の評価フレームワークにも気づきます。

ところで、NEC社会起業塾にしろSVP東京の投資委員会にしろ、社会起業コンテストは「収益性」という軸が入らない代わりに「共感」という非常に客観化が難しい軸が評価に入ります。個人的には共感は持続性が疑わしいので最初からあてにすべきではないと思っていますが、もちろん共感はないよりはある方がいいし、特にこういったコンテストですと大きな力になってくれる。

でも共感は定量的に測定するの難しいから操作もできないよなあ、と思っていたのですが、このコンテストには「共感度クリック」という、オーディエンスが共感した団体に投票出来るしくみがあったので、この結果を被説明変数として、各団体のプレゼン(録画もあります)を思い出しながら、これを機会にちょっとまじめに共感のドライバーを考えてみました。具体的には、共感度の高い群と低い群に分け、前者にあって後者にないものは何か?その差が生まれている要因は何か?を考えてみたのです。

なお選考結果はまだ出ていないので、この分析と、コンテストの通りやすさや、事業そのものの価値とは全く関係ないことをお含みおきください。「30分のプレゼンでオーディエンスの共感を得る方法」という点においてのみの考察です。あと、共感の構造については、もう少し勉強が必要だと感じています。

今回に限って言えば、共感度の高い団体には以下の傾向があるように思います。

1)受益者オリエンテッドであること
アプローチや起業家個人が前面に出ておらず、それ以上に受益者の顔が具体的に見える。まずは「誰に対する」「どんな提供価値なのか」ありきで、だからこのアプローチ、だから私が、という流れが見えやすい。これはプレゼンの内容からもうかがえますが、プレゼン中に垣間見えるその方のスタンスや、質疑応答、とくに競合に関する質問のところで分かります。

2)受益者の感情が想像可能であること
受益者が現在直面しているネガティブな状況や感情と、そのソーシャル・ビジネスによって受益者が得られるであろう将来のポジティブな影響や感情が想像しやすいことが共感を呼んでいるっぽい。これはオーディエンスの想像力という能力の問題もありますが、受益者の状況がオーディエンスのそれに類似していればいるほど想像し易いと思います。

では、これを踏まえて、どうすれば共感を得られるのかを考えてみると、

1)受益者の顔と価値を「具体的に」見せる。
こんな人がこういう価値を受け取る、ということがイメージできるような情報提供をする。一般論より具体例で。写真や受益者の声は効果大ですね。起業家本人に「価値があるんです」って連呼されてもあまりピンときませんが、それで人生が変わったということが受益者自らの言葉や表情で語られると納得度が非常に高いです。起業家さんたちはふだん眼の前で見ているから、それが周りは分からないということが分からないだけなんだろうなーと思いますが。

2)緻密なニーズリサーチをする。
1)の根拠となるもの。なお二次データは、issueのインパクトは分かるけれど受益者の顔は見えてこない。一方、自ら現場で採ってきたデータは、多少バイアスが感じられても説得力がある。さらに手間や時間のかかっているデータを見せられると、起業家の事業にかける気合も伝わってきて、そこまで腹括ってるなら成功確度も高いかもと思わされます。(7月の研究会で取り上げたK社が膨大なニーズ調査を質量両面でやっているのを見て、やっぱりここまでやらないと本当のニーズは把握できないんだなあと思いました)

3)自らの立ち位置を「受益者の視点で」語る。
2)をやっているからできることでもありますが、問題の構造と競合と比較したときの立ち位置を自分目線ではなく「受益者目線で」語る。受益者にとってのコンシェルジュ的役割が果たせ、場合によっては競合を推薦できるくらいになるといいのかもしれません。受益者にとってはA団体かB団体かではなく、どちらに行けば自分の問題が解決されるのかがポイントでしょうから。

4)受益者の感情や受け取る価値を一般化して伝える。
1)で受益者を具体的にしましたが、その受益者が受け取る価値はなるべく一般化して、オーディエンスが日常の中で味わう感情と紐付けして伝えられると、「あー確かにねー、それは味わってほしいよねえ」という気持ちを抱きやすく、それが共感につながるような気がします。

5)あくまで拘るべきは提供価値であって、アプローチではないことを見せる。
プレゼンの行間から伝わってくる優先順位が、受益者よりもアプローチや起業家本人だと共感できない。「そのアプローチがいいと思っているのは『あなた』であって、受益者じゃないのでは?」と思われてはいけない。オーディエンスは、起業家が受け取る価値ではなく、受益者の受け取る価値に興味がある。

以上。あと、全体を俯瞰して思うのは、オーディエンスはその事業の目的が自己実現活動なのか、社会的価値創出活動なのかをけっこう見ていて、後者により強く共感するということですね(「ソーシャル」ビジネスだから当たり前か)。これは実際の心構えがそうであることも必要ですが、それをきちんと伝える表現力も必要なんだな〜と思います。自己実現活動が悪いとは決して思いませんが(それを好むオーディエンスも実際にいるし)、マジョリティは取りにくいのだなという印象です。

しかし第三者だからこんなエラそうに語れるけど、自分が当事者だったら絶対出来ないと思う。そして分析されている当事者にとっては非常に迷惑な話だとも思う(ごめんなさい)。でも、今現在、挑戦の途上にいる人たちに少しでも道標を提示したいのと、私もいつか自分の番が来たときに活かせるよう、知見を貯めておきたいのです。




posted by Kokubo at 12:25| ☔| Comment(2) | TrackBack(1) | 日々のつれづれ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
さすが、とっても参考になりました。
そうですねえ、受益者の顔が想像の世界とはいいつつ、リアルに見え、サービス提供によって、価値が間違いなく生み出されていることに共感できれば強いんだろうなあ。
一方で、共感が強くてマッチングしちゃうと、その後の援助もしくは協働の挑戦度が高くなる傾向にあり、実際にはある経営モデルは見えていないと共感はむしろ遠慮した方がいいか、もしくは失敗ありをよしとして(2−3年のレベルで考えず)突っ走るか、どちらかなあと考えます。
僕の印象ですが、社会的価値やソーシャルベンチャーというふわっとした領域でさえ、文脈は大事で(文脈で判断する人が多いから。僕は最近そうでもないです)、文脈を作れた団体が勝ち残るような傾向にある気がします。 
Posted by Kanai at 2009年09月07日 00:57
しかし、コンテストの結果はまた全然違いましたねえ〜。
文脈で判断というか、文脈の下にある真価を見抜けない(あるいは見ようとしない)人が増えてきているのかな・・・とはちょっと思います。全然根拠ないですけど。
だから、「分かりやすさ」が超強力なamplifierになるんだなーと思います。
個人的には、共感されるのは嬉しい反面、人によってはちょっと重い。自分を持っている人の共感はとても励みになるんだけど、持っていない人のそれは依存に感じてしまいます。
Posted by こくぼ at 2009年09月15日 10:29
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備忘録2。
Excerpt: 必要不可欠なソーシャル・サービスと、 あった方がいいけどなくてもなんとかなるソーシャル・サービスを、 どうやって分けるのだろうと、素人ながら疑問。 Food for Thought: 共感ドライバー..
Weblog: 男のすなる「にき」といふもの ver.2
Tracked: 2009-09-01 15:25
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